【なぜ難しい?】本当に良い日本の製品を、ヨーロッパで届けるために必要なこと
どれほど丁寧につくられた製品であっても、それがまだ知られていないものであればあるほど、 また価格が高ければ高いほど、その魅力を伝えるには時間と対話が必要になります。
特にヨーロッパの高品質市場では、「誰が作り、誰が届けているのか」という背景への信頼が重視されます。 オンラインの情報やパッケージだけでは、伝わらないものが確かに存在しています。
信頼は、“顔の見える関係”から生まれる
文化的な背景をもつ製品にとっては、スペックやデザインだけでなく、語られるべき文脈と、それを伝える人の姿勢が重要になります。
どこで作られ、なぜこのかたちなのか。
どのように使うと、どんな時間が生まれるのか。
そうした説明があることで、単なる“もの”が“体験”へと変わります。
こうした丁寧なコミュニケーションは、日本文化に由来するプロダクトであればあるほど、その真価を引き出すうえで欠かせないプロセスだと感じています。
現地で伝えるということ
現在、私はヨーロッパを拠点に、日本文化にまだ馴染みのない現地の方々に向けて、 ワークショップやセミナーを通じた文化発信を行っています。
大切にしているのは、技術や知識だけでなく、その背景にある価値観や美意識まで丁寧に届けること。 言葉や所作、空間そのものが自然に文化を語るような、そんな体験の場づくりを目指しています。
ドイツ語圏を中心に、現在はフランスでも活動を展開しており、今後はヨーロッパ全体へ広げていく予定です。
文化は“説明”ではなく“体験”で伝わる
たとえば日本茶もそのひとつです。 味や香りだけでなく、湯温、時間、器、静けさ── すべてが含まれて、ようやく「体験」となります。
こうした繊細な魅力は、ただ「美味しいお茶です」と紹介しただけでは伝わりません。 必要なのは、手渡すように、ていねいに伝えること。 そして、その伝え方を現地の文化や感覚に合わせて“翻訳”することです。
こうしたアプローチは、20年以上ヨーロッパに暮らし、現地企業や国際的な環境で実務を重ねてきた中で学んだことでもあります。 異なる文化のあいだで、何を、どのように伝えれば届くのか。 その感覚を、現場での経験を通じて積み重ねてきました。
日本茶ブランド「Kanoa Tea」の立ち上げ
実際に自ら体現して示したい──そんな思いから、2024年に高級日本茶ブランド「Kanoa Tea(カノアティー)」を立ち上げました。
扱うのは、五感と心で味わう高品質な希少玉露です。 抹茶ブームが続く中で、玉露という選択には多くのチャレンジがあることも承知しています。 だからこそ、単に「良いお茶を売る」のではなく、 どのように楽しむか、なぜその一杯が大切なのかを、実際に茶葉に触れながら、五感を通して体験していただくことを軸にブランドを設計しました。
Kanoaは、製品そのものよりも体験を重視するブランドです。 一杯のお茶を通じて、日本の美意識や静けさ、手間をかけるという豊かさに触れていただくことを目指しています。
また、Kanoaでは自社ブランドの紹介だけにとどまらず、 番茶、ほうじ茶、玄米茶、煎茶、深蒸し茶、かぶせ茶、抹茶、玉露など── 日本茶の種類や製法、味わい、産地の違いといった基礎的な知識もあわせてお伝えしています。
最終的にどのお茶を選ぶかを決めるのはお客様です。 選択肢を広げ、理解を深めていただくことで、日本茶全体への関心や信頼が育っていくと信じています。
デザインやブランディングも「翻訳」の一部
文化を伝える上で、視覚的なデザインやブランディングも欠かせません。
Kanoaでは、日本のことをあまり知らないヨーロッパの方々にも受け入れられやすいように、現地の美意識や感覚に沿った形での見せ方・語り方を工夫しています。
一方で、表現の核には日本のミニマリズムと静けさを据え、和の精神を残した「和モダン」な世界観をブランド全体に通底させています。
これは、日本文化の本質を損なうことなく、現地の人々に自然に届くかたちで調整された、感性に寄り添うコミュニケーションでもあります。
届きづらいところに、そっと手を差し伸べる
日本で育まれた感性を、異なる文化圏の中で丁寧にローカライズし、現地の方々に直接届けること。
そして、時間をかけて「個」に近い信頼関係を築いていくこと。
こうした繊細なプロセスは、海外に拠点を持つ日系企業でも、なかなか対応しきれない領域です。
私は、現地の生活者として、また実務者としての視点から、言語のニュアンスや文化的な感受性といった “痒いところ” にも応えることができます。
たとえ日本に詳しい現地のブローカーや卸会社であっても、日本人ならではの繊細な感性──
空気を読む姿勢、言葉の裏にある思いやり、常識の捉え方、物事の見方、そして言葉遣いの細やかさ──
そうした「文化の深層」にあるものまで、正確に伝えるのは決して簡単ではありません。
けれど私は、そうした“説明しきれない領域”にこそ、日本文化の本質があると感じています。
それらを現地の文化に寄り添いながら、無理なく、けれど確かに伝えていく。
それが、私の担いたい役割です。
日本発の高品質ブランドを、ヨーロッパへ
お茶に限らず、工芸、ビューティー、ライフスタイル── 日本の繊細なものづくりを、文化ごと丁寧に海外に届けたいとお考えの方へ。
ブランドの立ち上げから、現地での文化翻訳・体験設計、営業支援・販売モデルづくりまで、実務と感性の両面からサポートいたします。
もし、日本文化を丁寧に、正しく海外に届けたいとお考えの方がいらっしゃれば、ぜひ一度、お話しできれば嬉しく思います。
お問い合わせ先:contact@thekanoa.com (Eメール)