海から上がって器材を片づけ終わるころには、少しだけ名残惜しい気持ちになります。
海から上がって器材を片づけ終わるころには、
少しだけ名残惜しい気持ちになります。
「もう終わりかぁ」
そう思いながらも、
髪に残った潮の香りや、
肌に感じる風が、
その日の海をずっと近くに残してくれます。
みんなで今日見た景色の話をしたり、
「あの魚、見た?」
「透明度すごかったね」
「気持ちよかったね」
そんな何気ない会話が、
また楽しい。
同じ海に入っていても、
見ていたものや感じたことは人それぞれで。
だから話してみると、
自分が気づかなかった海に出会えたりします。
「あ、そんなところにいたんだ」
「そこ見ればよかったな」
なんて笑いながら、
今日の海をもう一度みんなで潜り直しているような気分になります。
そして帰り道。
車の窓から見える海は、
朝とはまた違う色をしています。
少しやわらかくて、
少し静かで、
一日を見送ってくれているような色。
その景色を眺めながら、
「今日もいい日だったな」
そんなふうに思える瞬間があります。
特別なことがあった日だけじゃなくて、
何気なく潜った日でも、
予定通りに終わっただけの日でも、
海へ行った日は、
なぜか心に残ります。
きっとそれは、
海の中で見る景色だけじゃなく、
その日の空気も、
音も、
匂いも、
会話も、
全部まるごと記憶に残っているから。
海の思い出って、
ひとつの景色ではなくて、
その一日そのものなのかもしれません。
だからまた、
次の海が楽しみになる。
まだ見たことのない景色にも会いたいし、
何度も見ている景色にも、
また会いたい。
海には、
「また」がたくさんあります。
また潜りたい。
また会いたい。
また見たい。
その「また」が増えていくたびに、
海との時間も、
少しずつ深くなっていく気がします。
そしてこれからも、
自分のペースで。
焦らず、
ゆっくり。
ひとつずつ、
海の思い出を増やしていけたらいいなと思っています。
— 海沼葵衣