🏠 第1章:家と人 — 家は誰かの物語を運んでいる
🏠 第1章:家と人 — 家は誰かの物語を運んでいる
香川県の小さな町にある僕の実家は、庭にみかんの木が一本だけ生えている、年季の入った戸建てだ。
玄関のドアはちょっと古くて、閉めると「ガタン」と音がする。それでも、僕にとってはその音すら安心の合図みたいなものだった。
大学に進学してひとり暮らしを始めてから、家という存在が以前より客観的に見えるようになった。
不動産の勉強を始め、宅建のテキストを開くたび、
「家は契約の対象であり、資産であり、権利である」
と、法律的に整理されている。
でも、僕の中での家は、いつまで経っても“人の記憶の箱”だ。
柱に刻んだ子どもの頃の身長、冬の朝に母がつけるストーブの匂い、
夕方になるとどこからともなく聞こえる鍋の音——
家には、全部「人の暮らし」が染みついている。
不動産のテキストに載っている“家”と、僕が心で覚えている“家”。
その二つを行き来しながら、
家とは、建物と人の物語が重なる場所なのだと感じるようになった。
そして、いつか自分が不動産の仕事をするとき、
目の前の物件を “建物として” だけでなく “暮らしとして” も見られる人になりたいと思う。