【福本潤・元医師】誰も見ていないときに咲く花を、僕は信じたい
Photo by Mink Mingle on Unsplash
仕事の成果は、いつも「見えるもの」で判断される。数値、評価、リアクション。けれど僕は最近、それよりも「誰も見ていないときに咲く花」に心を惹かれるようになった。
ある日、出勤途中の小さな公園で、ひっそりと咲く花を見つけた。通勤ラッシュの人たちは誰も気づかない。誰も写真に撮らない。けれどその花は、朝の光をまっすぐに受けて、精一杯の姿で咲いていた。その瞬間、なぜか胸が熱くなった。
仕事の現場でも、同じような光景がある。誰の目にも触れない小さな工夫。報告書に書かれない地味な努力。評価されないアイデアの試行錯誤。そうした「見えない努力」が積み重なって、ある日突然、大きな花のように咲く瞬間が訪れる。それを僕は何度も見てきた。
それなのに、私たちはつい「注目されること」ばかりに焦点を当ててしまう。数字や結果が出ないと不安になる。いいねがつかないと落ち込む。でも、誰にも気づかれない場所で、自分だけのペースで咲く花にこそ、ものづくりの本質があるのではないかと思う。
僕が今働いているチームにも、そういう人がたくさんいる。自分の名前が前に出なくても、みんなのために裏で動いてくれる人。自分の役割を丁寧に果たし、目立たない場所で価値をつくる人。そういう人たちが、組織の呼吸を静かに整えてくれている。
この世界では「見えるもの」を評価する仕組みが整いすぎている。だからこそ、僕は「見えない花」を信じたい。誰かの目に映らなくても、自分の信じる美しさを形にする。その姿勢が、きっとチームを強くし、未来を変える力になる。
帰り道、朝の花をもう一度見に行った。もう夕陽に溶けそうで、花びらは少ししおれていた。でも、確かにそこにあった。誰も見ていなくても、自分のタイミングで咲いて、やがて散っていった。その潔さに、仕事の理想を重ねてしまった。
僕らの仕事も、そうでありたい。誰かの評価を待たず、誰かに気づかれなくても、自分の中にある信念で咲く。それを積み重ねていくことで、きっといつか、誰かの心に届く花が生まれる。