【松野翔太:堺市/教師】雨の日の窓辺
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今日は一日中、雨が降り続いていました。窓の外を眺めていると、雨粒が窓ガラスを滑り落ちるたびに、まるで小さな物語が生まれているように感じます。一粒一粒がそれぞれの道筋を描きながら合流し、流れていく。普段は無意識に通り過ぎてしまう光景ですが、今日は不思議とそのひとつひとつが愛おしく見えました。
子どもの頃、雨の日は退屈で外に出られないことを嘆いたものです。でも、あの頃は気づかなかった小さな発見が、今はとても楽しく思えます。窓際に置いたコーヒーカップの蒸気が、雨の音と微かに重なり合う。外を行き交う人々の傘の色がランダムに並び、街全体がまるでモザイク画のように見える。雨がもたらす小さな変化が、日常を少しだけ特別にしてくれるのです。
不意に、自分が雨粒の視点で世界を見ているような感覚に陥りました。空から落ち、窓に当たり、流れ落ちる。その一瞬一瞬で景色を切り取り、道の先にあるものを映し出す。私たちも同じように日々の行動や選択で、誰かの目に映る景色や物語を形作っているのかもしれません。誰もが知らず知らずのうちに小さな影響を与え、思わぬ形で連鎖していく。
窓辺に座りながら、手元のノートに思いついたことを書き留めます。仕事のアイデアでも、日々の気づきでも、ほんの些細な発見でも、文字にすることで世界が少し広がる気がします。雨が降っているだけなのに、今日の窓辺はまるで小さな創作空間のようです。視覚、聴覚、触覚が一体となり、ひとつの物語を紡ぐ手助けをしてくれるのです。
仕事やプロジェクトに追われる毎日でも、こうした時間を意識的に持つことで、新しい発想や視点を生むことができると感じます。普段は当たり前に過ぎてしまう光景でも、少し立ち止まって観察することで、思わぬ学びや気づきがある。雨の日の窓辺は、そんな小さな創造の練習場であり、自分の感性を確かめる場所でもあります。
雨が止む頃には、外の景色も日常に戻るでしょう。でも、窓辺で感じた小さな物語や気づきは、私の中に静かに残り、次の行動や発想のヒントになってくれます。日常の中に潜む小さな世界を意識することで、いつもの景色も少しだけ豊かに見えてくるのです。今日の雨もまた、私にとっての贈り物でした。