【松野翔太:堺市/教師】なぜ僕は教師からエンジニアへ?
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現在はフリーランスのシステムエンジニアとして活動していますが、少し前まで僕は高校の教壇に立つ教師でした。
生徒たちに「なぜ勉強するの?」と聞かれた時、僕はいつも「将来の選択肢を広げるためだよ」と答えていました。しかし、生徒にそう話す一方で、自分自身の将来にどこか漠然とした不安を感じていました。教師という仕事は、子どもたちの成長を間近で見られる素晴らしい仕事です。でも、定年まで同じ場所で働き続けることが、果たして自分にとっての「最高の選択」なのだろうか?
そんな問いが頭の片隅に常にありました。そんな時、教育現場での業務改善に興味を持つようになったのが、僕の転機でした。授業準備や成績処理、生徒指導記録など、教師の仕事には多くの事務作業が伴います。これらをITの力で効率化できれば、もっと生徒と向き合う時間が増えるはずだ。そう考え、独学でプログラミングを学び始めました。
最初は簡単な自動化スクリプトを作ることから。Google Apps Scriptを使って、生徒の提出物の管理を自動化したり、成績表を簡単に作成できるツールを作ったりしました。すると、同僚の先生方から「すごいね!」「どうやって作ったの?」と声をかけられるようになりました。
その時の「すごい!」という言葉は、僕にとって大きな喜びでした。それは、生徒が新しいことを学び、目を輝かせる姿を見た時と同じような感覚でした。自分の作ったものが、誰かの役に立ち、感謝される。それは、僕が教師として感じていたやりがいと、本質的に同じものでした。
プログラミングを学ぶうちに、僕は開発そのものの面白さにも夢中になっていきました。一つの課題に対して、様々な解決策を考える。まるで、生徒が解けない難問に、一緒に知恵を絞って向き合うような感覚でした。そして、苦労して完成させたシステムが、誰かの役に立っていることを実感した時、僕は「これを仕事にしたい」と強く思うようになりました。
そして、僕は教師を辞め、フリーランスのエンジニアとして独立することを決意しました。周りからは「もったいない」「安定を捨てるのか」という声も多く聞かれました。しかし、僕には確信がありました。教師として培った「相手の立場に立って考える力」と「粘り強く課題を解決する力」は、エンジニアの仕事でも必ず活かせる。そして、何よりも自分自身の「将来の選択肢を広げる」という、生徒に語っていた言葉を、自分自身で体現したい。
今、僕は中小企業やスタートアップのクライアント様と協働し、様々なシステムの開発に携わっています。お客様はITに詳しくない方も多く、課題のヒアリングから丁寧にご説明し、安心してプロジェクトを進められるよう心がけています。これは、生徒に難しい概念を分かりやすく教えるのと、全く同じです。
僕のキャリアは、一見すると大きな方向転換に見えるかもしれません。しかし、僕の中では全てが繋がっています。誰かの「困った」を解決し、感謝される喜び。それは、僕が教師として、そしてエンジニアとして、常に追い求めているものです。
もしあなたが、今いる場所から一歩踏み出すことに迷いを感じているなら、ぜひ一度、自分の「なぜ?」という気持ちに正直に向き合ってみてください。きっと、新しい道が見えてくるはずです。