【前嶋拳人】給料日よりも、エラー画面の「赤」に恋をして
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私たちはいつから、失敗を汚いものだと思うようになったのでしょうか。エンジニアとして長年、完璧を求められる世界に身を置いてきた私ですが、最近はむしろ、予期せぬトラブルの中にこそ真実が隠されているのではないかと感じています。それは例えば、静まり返った深夜のオフィスで突如として画面を染め上げる、鮮やかなエラーの赤色。かつての私にとって、それは血の気が引く絶望の色でしたが、今ではそれが、新しい発見へと誘う情熱の招待状に見えて仕方がありません。
多くの人は、決められたレールをいかに速く、正確に走るかを競い合います。でも、本当に面白いことが起きるのは、いつもレールを外れたその先です。大手企業で堅牢なシステムを構築していた頃の私は、間違いのない正解ばかりを探していました。しかし、独立して多様な価値観に触れる中で気づいたのは、完璧すぎるものには人の心が入り込む隙間がないということです。少しの歪みや、計算外の挙動。そうした人間味溢れるノイズこそが、誰かの心を動かすサービスを生み出す種になります。
私はよく、自分たちのシゴトを登山に例えて考えます。山頂に到達することだけが目的なら、ヘリコプターを使えばいい。けれど私たちが本当に求めているのは、自分の足で土を踏みしめ、時には道に迷い、トゲのある草に手足が傷つくことさえも楽しむ過程そのものです。苦労して辿り着いたからこそ、そこから見える景色は格別の価値を持ちます。効率や合理性という名のショートカットを捨てたとき、はじめて私たちは労働という義務から解放され、表現という名の自由を手に入れることができるのです。
最近の私は、チームメンバーと話すとき、あえて成功体験よりも失敗談を掘り下げるようにしています。あのときなぜ動かなかったのか、なぜあんなに無様な結末を迎えたのか。それを笑いながら共有できる関係性こそが、最強の組織を作る基盤になります。失敗を許容するのではなく、むしろ失敗を歓迎し、それを楽しむ文化。そんな道楽のような精神が、結果として世の中を驚かせるようなイノベーションを引き寄せるのだと確信しています。
人生という壮大なデバッグ作業において、私たちは誰もが未完成な存在です。今日という一日のどこかで、あなたもきっと小さな壁にぶつかるでしょう。そのときは、どうか顔を伏せないでください。目の前の「赤」は、あなたが挑んでいる証拠であり、まだ見ぬ正解への道標です。完璧を演じるのをやめて、不器用な自分をそのまま晒してみる。そこから始まる対話が、あなたの周りの世界を、もっと豊かで彩りあるものに変えていくはずです。
私たちは、単にシステムを作るために集まった集団ではありません。技術という言葉の盾を使いながら、実は誰よりも熱く、人間としての躍動を探求している冒険者たちです。効率化の波に飲まれることなく、あえて面倒なことを面白がる。そんな変なこだわりを持ち続けられる仲間と共に、私は今日も新しい迷路へと足を踏み入れます。画面を閉じた後、ふと自分の周りを見渡してみてください。そこにあるすべての不完全さが、愛おしく見えてきたら、あなたももう立派な私たちのチームの一員です。