【前嶋拳人】「非同期処理」を学ぶべき理由
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こんにちは。フリーランスエンジニアの前嶋拳人です。
今回は、僕がIT業界で10年以上経験してきた中で、特に重要だと感じている「非同期処理」についてお話したいと思います。
非同期処理と聞くと、Web開発におけるAPI通信や、大量データのバッチ処理といった技術的なイメージが強いかもしれません。しかし、僕が思う非同期処理の本質は、もっと広く、人生や仕事の進め方にも通じるものだと考えています。
新卒で入社したSIerでの出来事です。大規模な基幹システムの開発プロジェクトにアサインされ、僕は画面に表示するデータを取得する部分を担当しました。しかし、データ量が膨大だったため、ユーザーがボタンを押してから画面が表示されるまでに数秒かかってしまうという問題が発生したのです。ユーザーは待たされることにストレスを感じ、使い勝手が悪いという声が上がりました。
この問題を解決するために、先輩から教わったのが「非同期処理」でした。ユーザーが操作したタイミングで、画面の表示に必要な最低限のデータだけを先に取得し、時間のかかる残りのデータは裏側で非同期的に処理を進めるように設計を変更しました。結果、ユーザーは待たされることなく、スムーズに次の操作に進むことができ、システムの満足度は大きく向上しました。
この経験は、僕のエンジニアとしての考え方を根本から変えるものでした。それまでは、すべての処理を順番通りに、同期的に行うことが当たり前だと考えていました。しかし、ユーザーの視点に立って、「何を待たせるべきで、何を待たせないべきか」を考えることの重要性を学びました。
この考え方は、フリーランスになってからの仕事にも活きています。
たとえば、クライアントとのやり取りです。クライアントからの依頼や質問に対して、すべてを完璧に調べてから返信しようとすると、どうしても時間がかかってしまいます。その間、クライアントは「どうなっているんだろう?」と不安になってしまいますよね。
そこで、僕は「非同期処理」の考え方を応用しています。まず、簡単に答えられる部分や、現在進行中の状況を先に共有します。「いただいたご質問について、現在調査中です。〇〇についてはすぐに回答できますが、××については少しお時間をいただきます」といったように、すぐに伝えられる情報を先に伝えます。そして、時間のかかる調査や技術的な検証は、裏側で進めておく。そうすることで、クライアントは安心でき、僕も自分のペースでじっくりと作業に集中できます。
これは、単なる報連相のスキルではなく、相手の時間を尊重し、信頼関係を築くためのコミュニケーション術だと考えています。
非同期処理の本質は、待つべきではないものから「待ち」をなくし、効率とユーザー体験を向上させることです。これは、エンジニアリングの世界だけでなく、あらゆるビジネス、そして日常生活においても応用できる普遍的な概念だと思います。
技術を学ぶことは、単にコードを書くスキルを身につけることではありません。その技術の背景にある哲学や考え方を理解することで、あなたの仕事や人生はもっと豊かになるはずです。
これからも、エンジニアリングの奥深さを皆さんにお伝えできれば嬉しいです。