現場トラブル事例と解決法
現場トラブル事例と解決法
──向井聡一・一級建築士の“現場の知恵”
建築現場では、どれだけ準備をしていても、想定外の出来事が起こるものです。
大切なのは、“トラブルをゼロにすること”ではなく、
トラブルに気づく速さと、誠実に解決する姿勢です。
今日は、実際の現場で起こりがちなトラブルと、その解決法をまとめてみました。
◆ 1. 寸法違い・位置ズレ
● 事例
- ドア枠の寸法が図面と異なっていた
- コンセントの高さが左右で違う
- キッチンの下地壁の位置が数センチずれていた
現場では、5mm・1cmのズレが、最終的な印象を大きく左右します。
● 解決法
- 初期段階でのこまめな確認
下地の段階で細かい寸法をチェックし、早期に修正。 - 大工さん・電気屋さんとの情報共有
「ここは特に重要です」という箇所を事前に伝える。 - ズレが出ても冷静に原因を特定
図面ミスか、施工ミスか、材料の誤差かを一緒に確認する。
◆ 2. 雨による材料の濡れ・工程遅れ
● 事例
- 木材が雨に濡れて反りが出た
- 防水前に突然の大雨で工程がズレた
- 外壁工事が雨続きで進まない
自然はコントロールできませんが、対策はできます。
● 解決法
- 天候を見越した工程管理
外作業は可能な限り晴れの期間にまとめる。 - 養生(ようじょう)強化
木材や断熱材はブルーシートで確実に保護。 - 濡れた場合の対応基準を共有
「どのレベルまで許容できるのか」を職人さんと事前に確認しておく。
◆ 3. 業者間の連携ミス
● 事例
- 電気工事と大工工事の進み具合が噛み合わない
- 設備屋さんが入るタイミングを誤って現場が渋滞
- 塗装屋さんが仕上げに入った時点で壁が未完成
現場は多職種が入り乱れるため、連携が命です。
● 解決法
- 工程会議の徹底
週単位・日単位で各業者の作業内容を共有。 - 現場責任者の明確化
誰が指揮するか曖昧にしない。 - 作業スペースと順序の優先順位を合意
どの業者がいつ作業しやすいかを考慮して調整する。
◆ 4. 材料の誤発注・不足
● 事例
- 材料の品番を間違えて発注
- タイルの数量不足
- 色違いの商品が届いた
材料に関するトラブルは誰が悪いとも言い切れません。
だからこそ管理が重要です。
● 解決法
- 発注前のダブルチェック
図面と仕様書を照らし合わせて確認。 - 代替案にすぐ対応できる準備
色違い・メーカー違いなど、候補を事前に把握しておく。 - お客様への説明は正直に
隠すより、正直に伝えた方が信頼につながる。
◆ 5. お客様との認識ズレ
● 事例
- 壁紙の色が想像より明るい
- 外観がイメージと違う
- 造作家具のサイズが大きすぎる・小さすぎる
“見え方の差”は現場でよく起こります。
● 解決法
- 実物サンプルを現場で確認
可能な限り、大きめサンプルを使用。 - 光の条件で色が変わることを説明
朝・昼・夕方で見え方が違う。 - イメージ共有に写真や模型を活用
言葉だけでなく“視覚の共有”を大切にする。
◆ 6. 職人さんが判断に迷ったまま作業
● 事例
- 図面が曖昧で現場判断になった
- 納まりが複雑で手が止まってしまう
- 「聞きにくい」雰囲気があって進まない
こういう時ほど事故につながりやすいものです。
● 解決法
- 些細な確認もしやすい空気づくり
「何でも言ってくださいね」と常に伝える。 - 複雑な納まりは事前に手書きスケッチで共有
図面に追記することもある。 - 判断に迷う箇所は“写真付きで”情報共有
現場はスピードが命なので、文字より画像で伝える。
◆ まとめ
現場のトラブルは、建築士としての力量を試される瞬間でもあります。
大切なのは、
- 早く気づくこと
- 誠実に対応すること
- 職人さんと一緒に最良の解決策を探すこと
そして何より、
お客様に対して誠実であること。
どんなトラブルも、対応の仕方ひとつで信頼に変わります。
これからも現場での気づきを大事にしながら、
安心して任せていただける建築士でありたいと思います。