ZettaJoule設立までの道のり|下藤 充生
ZettaJoule株式会社CEOの下藤 充生と申します。
以前は住友商事株式会社にて、80億ドル規模のニッケル開発プロジェクトなどに携わってまいりました。主に天然資源のビジネスが専門で、ボリビアやマダガスカルなど世界各地で仕事をしてきました。17年の経験の中で、ビジネスパーソンとしての資質に加え、M&A 戦略立案、財務管理や社内編成などの資質も磨かれました。
多国籍の利害関係者が複雑な絡む現場で鍛えた交渉力と、プロジェクトマネジメント力が私の土台です。資本主義的な利益追求のみならず、現地住民の生活や将来、ステークホルダー同士を結び付ける橋渡し役として成果を上げてきた実績があります。
しかし、資源開発の最前線で痛感したのは化石燃料依存の限界でした。世界がカーボンニュートラルを掲げる中、持続可能かつ大規模なエネルギー源が不可欠であるにもかかわらず、実用段階まで進んだ決定打は多くありません。そのとき出会ったのが、日本が世界に先駆けて25年以上にわたり研究してきた高温ガス炉(HTGR)技術です。ヘリウムを冷却材に用いるためメルトダウンのリスクが極めて低く、900度近い高温熱を発電のみならず鉄鋼・化学・水素製造へも転用できる──それはまさにエネルギー・産業構造を一挙に変革しうる「眠れる宝」でした。ですが、国内では、政治的懸念やビジネス化の難しさゆえに商業化の道筋が描かれておらず、技術と社会実装のあいだには深い溝が横たわっていました。
「このギャップを埋め、高温ガス炉の価値を証明するためには、迅速な意思決定と柔軟な資金調達を兼ね備えたスタートアップが必要」
そう確信した私は、2023年末に ZettaJoule株式会社を創業しました。社名の 「ZettaJoule」(10²¹ ジュール)は、世界の年間電力消費を十年超まかなえるほどの桁外れのエネルギー量を意味します。この社名には、地球規模の課題に立ち向かう私達ZettaJouleの覚悟の気持ちを込めました。
ZettaJoule は、高温ガス炉を「発電+産業熱+クリーン水素」の統合ソリューションとして実装し、前段階として2030年前半に米国テキサス州の大学で実証炉建設を着工予定です。安全性のデータを積み上げ、2030年代半ばには産業用商用炉を稼働させるロードマップを描いています。
長年 原子力研究の第一人者としてHTGR の研究開発を牽引してきた國富一彦博士、カナダ原子力規制委トップを務めた Rumina Velshi 氏、米国 NRC や X-Energy で30年のキャリアを持つ Jeff Harper 氏、さらに三菱重工でエネルギー事業を統括した福泉氏らを迎え、技術・規制・ファイナンスを一体に束ねる計画を進行中です。私は代表として、商社で培った交渉術と資金調達の知見を総動員し、保険・ファイナンス・サプライチェーンを包括設計する総合プロジェクト推進を担っています。
ZettaJoule の究極のビジョンは、「安全でクリーンな高温熱を世界中の産業へ届け、エネルギー格差をなくす」ことです。離島や遠隔地に小型炉を配備すれば、送電インフラに依存しない地域活性化が可能になり、データセンター等電力多消費産業でも常時安定稼働が可能になります。CO₂削減への貢献はもちろん、地政学的リスクの緩和や水素製造コストの劇的低下にも直結。私はこの構想を実現させ、日本発の技術で世界のエネルギーの常識をも塗り替える覚悟です。
これまで培った「巨大プロジェクトを動かす力」と「多国籍チームを束ねる力」を、ZettaJoule株式会社では高温ガス炉という希望の技術に注ぎ込みたいと考えています。共同研究、資本提携、産業熱需要のマッチングなど、志を同じくするパートナーとの協業を心よりお待ちしております。