キッチンカーで「カレー」が選ばれる理由とは? 成功に必要な開業・運営のポイントを解説
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まえがき
広瀬玉二と申します。
私はフリーランスのWebライターとして、主に自動車・経理・転職といった専門分野の記事を執筆しています。
これら専門分野の執筆で培った、以下にあげる能力は、他の分野でも応用可能と自負しております。
①法規制や制度変更(例:インボイス制度、道路交通法)のリサーチ力
②BtoB(事業者向け)のビジネスモデルを分析し、分かりやすく解説する力
今回は、そのスキルセットの一例として、近年ビジネスモデルが多様化する「キッチンカー」をテーマに、開業希望者向けの解説記事を執筆しました。
※(画像生成にはGeminiを使用しております)
導入部
キャンプやイベントなどで味わうカレーが格別であるように、カレーはキッチンカー(移動販売)の分野でも非常に人気の高いメニューです。
原価率も低く、トッピングなど付加価値をつけやすい要素も多いため、人気を博しているお店も多く見られます。
しかし、なぜカレーがこれほど人気を集めているのか、具体的な理由についてはよく分からない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、キッチンカーでの出品を検討している方向けに、カレーが人気を集める理由について解説します。
キッチンカーでカレーを売る魅力
移動販売でカレーを提供する場合、カレーはご飯といっしょに提供できるため、昼食のタイミングなど「売れやすい時間帯」を狙って提供できるのがメリットです。
提供しやすい
カレーの場合、仕込みさえしっかり行っておけば、一連のオペレーションはシンプルにまとまります。
極端な話、ご飯を炊いて薬味を仕入れれば、あとはメインであるカレーの仕込み(調理)に集中できます。
お客様に提供する際も、ご飯、カレー、薬味の順に盛り付けるなど、オペレーションの流れを決めやすいでしょう。
提供棚のスペースにゆとりがあれば、薬味をお客様自身でかけてもらう方法も検討できます。
テイクアウトしやすい
カレーは使い捨てのプラスチック容器などと相性が良く、テイクアウトを希望されるお客様にもスムーズに対応できます。
食事スペースが設けられている会場に出展した場合は、容器をゴミ箱に捨てれば問題ないため、お客様の容器返却の手間がかかりません。
利益を出しやすい
一概にはいえませんが、カレーは原価率が比較的低い商品の一種で、高くても30%が目安とされます。
もちろん、スパイスや食材にこだわれば原価も上がりますが、高級食材を常時取り揃えておく必要はないため、利益が出やすいメニューと考えられます。
カレーで勝てるかどうかは分からない
カレーは日本の国民食的存在である一方、そのバリエーションも豊富で、好みも人によって違います。
定番商品でありながら、個性を打ち出せなければライバルに勝つことは難しいため、出店する前にいくつか検討すべき点があります。
差別化の必要性
カレーは非常にポピュラーなメニューのため、どうしても競争は激しくなります。
ありきたりな味では、数ある選択肢の中に埋もれてしまい、他店との差別化が難しい傾向にあります。
他店との違いを明確にする「こだわり」や「コンセプト」があるかどうかが、自店の人気を左右する鍵となります。
同時に、それをSNSやGoogleビジネスプロフィールでどう発信するのか、Webマーケティングの戦略も不可欠です。
ジャンル選定の重要性
一口に「カレー」といっても様々なジャンルがあるため、出店前にどのジャンルで勝負するのか決める必要があります。
例えば、あなたがグリーンカレーが好きだったとしても、出店予定の地域でウケるかどうかは分かりません。
個性は大切ですが、安定して収益を上げたいなら、常に「多くの人から愛されるかどうか」を意識して味を追求することが大切です。
カレーのキッチンカー開業に必要なもの
キッチンカーでカレー(飲食店)を開業するには、最低でも以下の3つを準備する必要があります。
普通自動車免許
キッチンカーの運転には、車両総重量に応じた自動車運転免許が必要です。
軽トラックベースのキッチンカーなら、普通自動車第一種免許で問題ありません。
しかし、車両総重量によっては「準中型免許(3.5トン以上7.5トン未満)」や「中型免許(7.5トン以上11トン未満)」でなければ運転できない場合があります。
大きめの車両で営業しようと考えている人は、自分が持っている免許で運転可能かどうか、あらかじめ確認しておきましょう。
食品衛生責任者
飲食を扱うキッチンカー営業において必須の資格です。
こちらは、地域の食品衛生協会が実施する、約6時間の養成講習会を受講すれば取得できます。
対面講習会のほか、eラーニング方式による講習会を行っている自治体もあります。
移動販売車の営業許可(飲食店営業)
カレーを販売する場合は「飲食店営業」の許可が必要で、営業したい地域を管轄する保健所で取得します。
また、キッチンカーは調理スペースが限られるため、食材のカット・煮込みといった作業については別の場所で行うのが一般的です。
申請の際は、車内の設備だけでなく「仕込み場所」についても詳細を明らかにする必要がある点に注意しましょう。
ちなみに、2021年6月の食品衛生法改正により、キッチンカー内での仕込みが認められるケースも増えてきています。
一例として、200リットル程度の給排水タンクを設置したキッチンカーであれば、車内での仕込みが可能となっています。
ただし、仕込みと認められる具体的な作業内容は、都道府県によって判断が分かれる可能性があるため、事前に確認しておくと安心です。
カレーのターゲット戦略
カレーは人気商品ですが、いつ・誰に・どこで商品を提供するのかを考えないと、想定通りに売れない可能性があります。
一般的には、カレーは「ランチタイムに食べるもの」というイメージが強いでしょう。
しかし、脳の活性化目的で「朝カレー」を食べる人もいますし、二日酔い対策としてカレーを食べる人もいます。
これらの点を踏まえ、需要に目を向けて時間帯や場所を決めることが、売上獲得のポイントです。
何度か試験的に出店し、お客様の反応を見ながら、最適な営業パターンを見極めていきましょう。
戦略例1:ランチ難民
職場の近くで昼食を食べたいのに、近くに食堂やコンビニが少ない場所は、キッチンカーの出店メリットが大きいでしょう。
一例としては、オフィス街や工業団地などがあげられます。
戦略例2:夕食準備
今晩のおかずに悩む主婦(夫)にとって、アツアツのカレーは最適解となる可能性が高いでしょう。
団地や住宅街の近くで営業できれば、食欲をそそる香りで「今夜のおかず」としての需要を喚起できます。
戦略例3:変則的な需要を狙う
キッチンカーの場合、出店場所の自由度が高いため、朝食やイベントでの軽食としてカレーを提供する方法も選べます。
また、夏はさっぱり系、冬は濃厚系のカレーといったように、季節に合わせて限定商品を提供するのも面白いアイデアです。
売上を左右するカレーの選定
ターゲットや時間帯の選定以上に、キッチンカーの成功を左右するのがメニュー構成で、中でもカレーの種類は重要です。
膨大なジャンルの中から、代表的なカレーの特徴を理解し、自分のお店の「ウリ」を打ち出せるようにしましょう。
欧風カレー
イギリス経由でヨーロッパに伝わり、アレンジされたカレーをいいます。
長時間煮込まれているため、まろやかでコクのある味わいが特徴です。
欧風カレーは、総じて日本人にも馴染み深く、好き嫌いが分かれにくいジャンルの一つです。
インドカレー
インドには、本来「インドカレー」という単一の料理はありません。
しかし、スパイスの調合(マサラ)に特色があることから、日本ではインドカレーというジャンルが認知されるようになりました。
煮込む工程は同じですが、調理には専門的な知識と技術が求められるため、参入障壁はやや高めです。
タイカレー
ココナッツミルクとナンプラー(魚醤)が味のベースとなっているカレーです。
スパイスの違いによって、グリーン、レッド、イエローなどに分かれます。
現在は業務用のペーストもあり比較的作りやすいですが、独特の風味と辛さから、客層を選ぶ可能性があります。
ライスカレー(家庭的カレー)
いわゆる「おふくろの味」に代表される、昔ながらの家庭的なカレーです。
一般家庭に寄せ過ぎると商品として成立しにくい反面、店主の「キャラクター」と結びつけることで、根強いファンがつくチャンスがあります。
カレーを引き立てるドリンク
キッチンカーは設備が限られているため、実店舗のようにドリンクの種類を多数取りそろえるのは難しいでしょう。
しかし、カレーのコンセプトと合致したドリンクは、売上と顧客満足度の向上に貢献します。
欧風カレーやライスカレーの場合は、万人受けする麦茶・ウーロン茶などがおすすめです。
インドカレーは辛く感じる人も多いため、乳製品を使ったラッシー、チャイなどを用意すると喜ばれるでしょう。
タイカレーには、ココナッツミルクの濃厚さと辛さを、酸味と甘みが中和してくれるレモンティーがマッチします。
提供するカレーのジャンルに合わせて、相性の良いドリンクを選びましょう。
顧客満足度を高めるサイドメニュー
漬物やサラダ、トッピングといったサイドメニュー(薬味)は、カレーライスに欠かせない名脇役です。
一般的なカレーに合わせるものとしては、福神漬けやらっきょう、高菜漬けといった漬物が思い浮かぶかもしれません。
より視点を広げれば、コールスローやシーザーサラダは箸休めになりますし、ゆで卵やチーズ、ハムカツといったトッピングは味変に最適です。
スープカレーなら、素揚げ野菜などをトッピングすると、野菜のうま味や香ばしさがスープの味わいをより一層引き立てるでしょう。
このように、一口にサイドメニューといっても多くの候補があるため、すべてを網羅するのは不可能です。
自分が提供するカレーの味をイメージしながら、もっとも味を引き立てるものは何かを考え、厳選して提供しましょう。
まとめ
カレーはキッチンカーのメニューとして非常に人気が高いため、クオリティが著しく低いなどの事情がない限り、一定の需要は見込めるでしょう。
しかし、そのお店が「人気店」になれるかどうかは、店主が提供するカレーにどれだけの「こだわり」と「戦略」を込められるかにかかっています。
ありふれたカレーでは他店との差別化が難しく、かといってあまりにニッチな方向性に進むと顧客を逃すことになります。
顧客のニーズと商品の価値、そして価格帯が合致すれば、大幅な値上げをしても人気が衰えないような名店へと成長できる可能性を秘めているのが、カレーというジャンルの面白さです。
ドリンクやサイドメニューで「選ぶ楽しさ」を演出しつつ、季節や出店場所の状況に合わせて柔軟に商品ラインナップを調整し、お客様に愛されるお店を目指しましょう。
また、出店場所や新メニューの告知をSNSで定期的に行うなど、オンラインでの顧客接点を持つこともリピーター獲得の鍵となります。
 
 
