【高倉友彰】コードに宿る「物語」を探して
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夏本番、連日厳しい暑さが続いていますね。 私はというと、そんな暑さとは無縁の冷房の効いた部屋で、ひたすらキーボードを叩く日々を送っています。 しかし、この時期は毎年、ある「お楽しみ」があるんです。
それは、新規サービスをリリースした後の「夏休み」のアクセスログを眺めることです。 多くの人がレジャーや旅行を楽しむこの時期、開発者の私も少しだけ息抜きをします。 その時に、密かに楽しんでいるのが、サービス利用状況の裏側にある「物語」を探すことです。
リリース直後は、まるで花火大会のように、たくさんのユーザーがサービスにアクセスしてくれます。 しかし、夏休みに入ると、そのアクセスは不思議な変化を見せます。 深夜なのにアクセスが急増する日があったり、普段は使われない機能が、ある時間帯だけ頻繁に使われたり。 「この時間帯にアクセスしてるのは、もしかして海外旅行中の人かな?」 「この機能、お盆休みの家族団らんの中で使ってくれたのかな?」 そんな風に想像すると、ただの数字の羅列だったログに、途端に命が吹き込まれたように感じられます。
先日、とある観光系のWebサービスを開発しました。 リリース後、夏休みに入ってからログを眺めていると、普段はほとんど使われない「〇〇探し」というニッチな検索機能の利用率が、特定の時間帯にだけ急上昇していることに気づきました。 最初は単純なバグかと思いましたが、よく調べてみると、それは家族連れが旅行先で、その土地ならではのものを探すために使っていたことが分かりました。
「この機能、本当に誰か使ってくれるのかな?」 開発中にそう思いながら作った機能が、見えないところで誰かの旅の思い出作りに役立っている。 この事実に気づいた時、私は鳥肌が立つほど感動しました。
エンジニアの仕事は、画面の向こうにいる「見えないユーザー」のために、コードを書くことです。 直接「ありがとう」と言われる機会は少ないかもしれません。 しかし、ログやデータという「足跡」を辿ることで、私たちが作ったものが、人々の生活に溶け込み、小さな物語を紡いでいることを知ることができます。
これからも、この「職人技」に磨きをかけ、コードの奥に隠された、温かみのある物語を創り続けていきたいです。