【高倉友彰】オフィスの窓から見る未来
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早朝のオフィスは、まだ誰もいない静寂の中で、机や椅子が淡い光に包まれていた。窓の外に広がる街並みを眺めながら、私は思った。ここで働くということは、単に業務をこなすだけではなく、自分自身の時間と空間をどう使うかの選択でもあるのだと。現代の働き方は、効率や成果ばかりが評価されるが、実は自分の思考や感覚を深める「小さな冒険」の時間こそが、仕事における本質的な価値を生む。
デスクに座ると、パソコンの光が私の手元を照らし、画面に広がる文字や図表が目に飛び込んでくる。だがその瞬間、意識は少しずつ外の景色へと移っていく。ビルの谷間を抜ける風や、交差点で行き交う人々のリズム、空の色の変化。それらを感じるだけで、日常の中に隠れていた発見が目の前に現れる。こうした感覚は、日々の業務に追われるだけでは決して得られない。情報に埋もれる世界で、目に見えない価値を見つける力を育むのだ。
ふと窓の外に見えた工事現場のクレーンに、私は目を奪われた。無機質な機械が規則正しく動くその姿に、効率や計画の美しさを感じると同時に、偶然に生まれる予想外の動きや変化もまた、人間の創造力を刺激する要素だと思った。オフィスの中での仕事も、計画通りに進めるだけでなく、偶発的なアイデアや気づきを取り入れることで、新たな価値が生まれる。予定調和だけでは生まれない発想を、日常の中でどう引き出すか。それこそが現代の仕事の醍醐味ではないだろうか。
メールや通知が届くたびに意識が途切れそうになる。しかしその瞬間こそ、自分の時間の使い方を問い直すチャンスだ。効率を求めるだけではなく、心を少しだけ外に開き、周囲の変化や自分の感覚に耳を傾けることで、仕事そのものが新鮮な体験に変わる。まるで日常の中で小さな冒険をしているかのような感覚だ。
オフィスを出る頃には、窓の外の景色は昼の光に満ち、街の喧騒も少し増していた。しかし私の中では、朝に感じた静寂と発見の時間が深く刻まれている。効率だけではなく、自分の感覚や思考を研ぎ澄ます時間を意識的に持つことで、働くことは単なる作業ではなく、人生を豊かにする冒険になるのだ。明日もまた、窓の向こうの未来に心を向けながら、日常の中に隠れた価値を探してみたいと思う。