【高倉友彰】履歴書に書けない設計図
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キャリアを振り返ると、履歴書に並んだ肩書きやプロジェクト名は、実際に歩んできた道のごく一部でしかないと感じます。SIer時代に携わった大規模システムの保守も、フリーランスになってからのスタートアップ支援も、外から見れば一行の経歴にまとまってしまう。けれど本当の経験は、その行間に潜んでいる小さな決断や試行錯誤の積み重ねの中にありました。
たとえば、要件定義の会議で誰も口にしなかったリスクを指摘するかどうか。夜中に落ちたサーバーを復旧させるときに、応急処置で済ませるか、翌日の運用まで見据えて手を入れるか。そうした選択の連続が、僕のエンジニアとしての設計図を形作ってきました。履歴書に書けない設計図こそが、自分の本当の強みだと考えています。
独立してから、その設計図を見直す機会が増えました。スタートアップの現場ではスピードが何より優先されます。完璧な資料よりも、その日のうちに動くプロトタイプが求められる。そんな環境で、昔身につけた堅牢なシステム設計の習慣は、一見すると重荷に思えました。けれど必要な部分を切り出して活かすことで、スピードと安定性の両立ができるようになったのです。古い道具を現代風にアレンジするような感覚でした。
最近はAIを使った自動化や効率化に携わることも増えました。新しい技術を前にすると、履歴書に載せてきた過去のスキルが色褪せて見える瞬間もあります。けれど、そこにこそ自分の設計図を重ね合わせる意味がある。どれだけ時代が変わっても、選択の軸や考え方は生き続ける。AIが出した答えをどのように扱うか、その判断は過去の経験があってこそ導けるものだと思います。
これから先、僕がどんな案件に関わるかはまだわかりません。ただ一つ確かなのは、履歴書に書けない設計図を磨き続けることが、自分のキャリアを唯一無二のものにしてくれるということです。