資料は、判決文みたいに作れ
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資料を作成することは、意外と難しいもので、悩んでいる新人の方も多いと思います。
私がもし指導する立場になったら、「資料は、判決文みたいに作ってみるといいよ」と伝えようと思います。
目次
1 新人時代の私
2 師匠から教わったこと
3 判決文の構造とは
4 A4用紙1枚にまとめなさい
5 師匠に言われた通りにしたら
6 もし指導する立場になったら・・・
1 新人時代の私
会計業界に飛び込んだばかりの頃の私は、資料づくりの迷子でした。
文書を作成するのに、Wordではなく、なぜかExcelを開き、セルを埋めていきます。
あれも大事、これも必要――そうやって詰め込んでいるうちに、資料は10ページ、20ページと膨れ上ります。
しかし出来上がったのは、自分にしか読めない「暗号」みたいな資料・・・!
しかも印刷すると文字は米粒サイズで、そもそも読めない。読む気を失わせる仕様でした。
実際に、お客様から「これ・・・どうやって読むの?」と言われたこともありました。
2 師匠から教わったこと
そんな私を見て、師匠が一言。
「ビジネス文書の最高のお手本は、裁判官が書く判決文だ。」
判決文は、誰が読んでも同じ理解にたどり着けるよう、論理を積み上げ、不要な言葉を削ぎ落とした構造になっているそうです。
「今後、資料をつくるときは、判決文のように書きなさい」――それが師匠からのアドバイスでした。
3 判決文の構造とは
判決文は、おおまかに次のような順番となっています。
- 主文(結論)
冒頭にいきなり「この事件の結論」を書く。
例:「被告は原告に対し○○万円を支払え。」 - 事実認定(前提)
何が起こったのか、時系列で簡潔にまとめる。
無駄な形容は排除し、事実だけを書く。 - 理由(論理)
どの法律や基準を使って、どう判断に至ったのかを論理的に説明する。
読み手が「なるほど、だからこの結論なのか」と納得できる流れになる。
この構造にすると、読み手は最初の数行で全体像が掴め、後は興味のある部分だけを読めば理解できます。
4 A4用紙1枚にまとめなさい
師匠の次のアドバイスはさらに衝撃的でした。
- 資料は専門家のためではなく、お客様のために書くものだ。
- 情報が多すぎると、何を言っているのかがそもそもわからなくなる。
- 簡単なことを難しくするのは素人でもできる。
- 難しいことを簡単にするのがプロだ。
そして極めつけが、
「A4用紙1枚にまとめなさい。」でした。
判決文方式で書くと、自然とA4一枚に収まることが多いです。
結論→前提→理由というシンプルな骨組みだけで、十分に伝わるからです。
5 師匠に言われた通りにしたら
半信半疑で取り組んだ「判決文方式」。
まずは、Excelを使用するのをやめ、Wordを使用することにしました。
Wordを使用することで、用紙のサイズをA4サイズ1枚で印刷することができ、さらに文字の大きさが米粒サイズになることを防ぐことができます。
そして、要点を整理し、余計な説明を削ぎ、判決文のように結論から書いていきます。
すると驚くほど資料がすっきりし、読み手の反応が変わりました・・・!
「わかりやすいです」
「これならすぐ理解できる」
「えっ、この資料を作ったのが、こんな若い人なんですか?」
特に、外国人のお客様からは ”You are professional !” と師匠の前で笑顔で言っていただき、とても嬉しかったのを覚えています。
そして、何より、自分に自信を持てました。
6 もし指導する立場になったら・・・
冒頭に戻りますが、資料を作成することは、意外と難しいもので、悩んでいる新人の方も多いと思います。
私がもし指導する立場になったら、「資料は、判決文みたいに作ってみるといいよ」と伝えようと思います。