【山本達也:千葉県/市川市】ホッチキスの針が足りない会議から学んだリーダーシップの話
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会議資料をまとめようとしたとき、ホッチキスの針が途中で切れてしまうことがあります。小さなことなのに、資料をきれいに綴じられない苛立ちや、手元に針の補充がない焦りが広がる。私が体験したのは、まさにそのタイミングで重要な会議が始まろうとしていた瞬間でした。
資料が片方だけ綴じられてページがバラバラになり、隣のメンバーが慌ててクリップを探し、別の人がコンビニまで買いに走ろうかと口にする。たった一つの針が欠けただけで、チーム全体の動きに波紋が広がったのです。面白いのは、この出来事が職場におけるリーダーシップやチームワークの縮図そのものだったことです。
不足が生じたときに、誰かが「どうするか」を決める必要がある。ホッチキスの針がないという小さなハプニングであっても、そこにリーダーシップの本質が見え隠れします。私たちは普段、戦略や売上やビジョンの話を大げさに考えがちですが、実は日常の小さな判断や機転にこそ、組織を前進させるヒントがあるのだと痛感しました。
そのとき、私はあえて自分が前に出るのではなく、メンバーの判断を尊重することを選びました。クリップで代用する提案を受け入れ、会議を予定通り開始する。完璧な形ではなかったけれど、誰かの柔軟なアイデアが組織をスムーズに進ませる力になることを体感したのです。リーダーとは常に先頭に立つ人ではなく、状況に応じて場を整える人であると学びました。
会議後に、ホッチキスの針を切らさないように在庫管理を見直そうという声が自然に上がり、次回以降は誰かが常に補充を気にかけるようになりました。ここにもまたチームの成長の兆しがありました。小さな不足が、仕組みを整えるきっかけを生み出す。これはまさに、組織づくり全体にも通じる法則です。
不足や失敗は、つい「防がなければならないもの」と思われがちですが、むしろそれをどう活かすかでチームの成熟度が変わる。ホッチキスの針が切れるというささいなトラブルからでも、人は学べるし、成長できる。私にとってこの体験は、どんな環境でもリーダーシップとは完璧な準備ではなく、起きてしまった不完全さをどうつなげるかだと気づかせてくれました。
だからこそ、今でもホッチキスを手にするとき、私はあの瞬間を思い出します。針が足りなかったあの日が、チームの関係性を変える大きな一歩になったことを。小さな不便からこそ、大きな可能性は育つのかもしれません。