【山本達也:千葉県/市川市】会議室の外で生まれるイノベーションの話
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ある日の午後、私は社内の小さなラウンジに座ってコーヒーを飲んでいた。普段なら会議室で議論されるプロジェクトが、なぜかこの場所で、しかも偶然隣に座った別部署のメンバーとの会話から、全く新しいアイデアとして立ち上がろうとしていた。
その瞬間、ふと思った。イノベーションは必ずしも会議室や公式のプロジェクトから生まれるわけではない。日常の中で生まれる小さな偶然の出会い、ちょっとした会話、異なる視点のぶつかり合い。それらが組み合わさったとき、従来の枠を超えた価値が生まれるのではないかと。
実際、私たちの会社では「Serendie Street Yokohama」のような共創空間を取り入れている企業が増えてきている。ここでは、部署や役職を超えて、自由にプロジェクトをデザインし、試作や議論を行うことができる。目指しているのは、成功や事業化率を最初から追わず、まずは出会いと対話を通じて発想の幅を広げることだ。
私が隣に座ったメンバーは、普段はまったく別の分野で働いている。だが、彼の話す視点と私の業務経験が合わさった瞬間、私たちは「こんなサービスがあったら面白いのではないか」という仮説を即座に作り上げた。その場で簡単な図を描き、AIやデータをどう活用できるかまで議論を広げることができたのだ。
重要なのは、この共創のスタイルが「等身大」であることだ。大規模な予算や壮大な社会課題を掲げるのではなく、目の前の課題や身近なニーズからアイデアを出す。小さな実験を積み重ねることで、思いがけない発見や偶然の価値が見えてくる。
さらに驚いたのは、このアプローチは社内だけでなく外部パートナーとの協働にも応用できる点だ。ハードウェア企業、ウェルビーイング事業者、ITベンチャーなど、異なる業界の知見を取り入れることで、従来の自社領域では考えつかなかったソリューションが形になる。オフィスでの自動配送ロボットサービスや、社員のストレスデータを活用した健康支援サービスなど、日常に密着した発想が生まれるのだ。
結局、イノベーションとは会議室や計画書の中だけで完結するものではない。ラウンジやカフェ、偶然の出会いの場で生まれる柔軟な対話の中にこそ、新しい価値は潜んでいる。私がその日体験した小さな偶然が、やがて会社の未来のプロジェクトに繋がるかもしれないと思うと、日常の一瞬一瞬がこれまで以上に面白く感じられるのだ。