【阪田和典】未来の癖が僕を追い越した日
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最近、自分でも説明できない奇妙な感覚に包まれている。まるで未来の自分が、今の僕に何かを伝えようとしているような、微かな引っかかりが日常のあちこちに落ちているのだ。その気配は仕事中にも顔を出し、意識を向けるたびに背中を軽く押されるような感じがする。誰に話しても笑われてしまいそうだが、この奇妙な感覚はどこか確かな手触りを持っていて、無視しようとしても必ず戻ってくる。
ある日、作業に集中していた時に、その気配が不意に濃くなった瞬間があった。手元のタスクには何の変化もないのに、頭の奥から何かがゆっくり姿を現してくるような、予期せぬ静かな衝撃が訪れたのだ。その時、今の自分が見落としていた問いが、未来の癖に引っ張られるように浮かび上がった。これは本来、もっと後になって気づくはずだった答えなのかもしれない。そう思うと、自分が自分の外側から動かされたように感じて、少しだけ身震いした。
この感覚に気づいて以来、僕は自分の心の動きを以前より丁寧に観察するようになった。いつも通りのルーティンの中に、未来の断片のようなものが紛れ込んでいることに気づいたからだ。例えば、会議の前にふと頭をよぎる小さな疑問が、その後の議論で重要な鍵になることがある。あるいは、タスクの優先順位をつける時に一瞬だけ違和感が生まれ、その違和感に従った結果、思わぬ突破口が開けることもある。これまでなら無意識に流していた些細な揺れが、実は未来への微かな案内役なのではないかと思えてくる。
こんな話をすると直感に頼りすぎだと言われそうだが、直感というよりももっと静かで淡い予兆のようなものだ。無理に掴もうとすると消えてしまうし、ただ受け取るだけでは形にならない。だけど、そのささやかな揺れに耳を澄ませていると、自分の思考の奥にある目に見えない回路が少しずつ明るくなっていく瞬間がある。その瞬間が訪れると、自分でも気づかなかったアイデアがゆっくりと形を帯びてくる。まるで未来の癖が、今の自分を先導しているような不思議な感覚だ。
この感覚を意識してから、働き方も少し変わった。以前は決められた工程や計画を忠実にこなすことを重視していたが、今は未来からの気配のような揺れに触れた時こそ、大事な瞬間だと思うようになった。その揺れは小さくても、そこにこそ自分の潜在的な思考が隠れているからだ。予定をずらし、あえてその揺れに従って行動すると、意外なほどスムーズに物事が進むことがある。逆に、無視して進むとどこかで必ず引っかかる。そんな経験を繰り返すうちに、未来の癖は僕を置いて先に走り、それが残した風だけが今の僕を導いているように思えてきた。
もちろん、この感覚に頼りすぎるつもりはない。直感だけでは仕事は成立しないし、論理や計画の精度はいつでも重要だ。それでも、目に見えない揺れを拾えるかどうかで、仕事の進み方が変わるのは事実だ。その揺れは、未来の自分が「あの時気づいてほしかった」と願っているサインなのかもしれない。そう考えると、見落としてしまうのが少しもったいなく感じられる。
今日もまた、その気配がそっと肩を叩いてくる。意味はまだわからない。だけど、その謎めいた手触りが、次の可能性の扉を静かに押している気がしてならない。未来の癖が僕を追い越し続ける限り、僕はその風を探し続けるのだと思う。