【元島純貴】技術と人の間にある「翻訳者」
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皆さんは「エンジニア」と聞いて、どんな仕事を想像しますか?
キーボードを黙々と叩いてコードを書く人、というイメージを持つ方も多いかもしれません。もちろん、それも大切な仕事の一部です。でも、僕がフリーランスになってから特に意識するようになったのは、エンジニアは「技術と人の間をつなぐ翻訳者」であるということ。
先日、とあるスタートアップ企業で、新規事業の立ち上げを支援していました。事業責任者の方は、その分野の専門家で、ユーザーの課題やビジネスの戦略について、熱い想いを持って語ってくれます。
「ユーザーがもっと直感的に使えるように、この機能をこんな風に改善したい」
「競合にはない、こんなユニークな体験を提供したいんだ」
その情熱的な言葉の裏側には、無数の「技術的な課題」が隠されています。どういうデータ構造で管理すればいいのか、どのクラウドサービスを使えばコストを抑えられるのか、セキュリティをどう確保するのか…。
僕の仕事は、その熱い想いを冷ますことなく、現実のシステムに落とし込むための「翻訳」をすることです。
例えば、「直感的に使えるように」という言葉を、具体的なUI/UXの設計に翻訳する。 「ユニークな体験」という言葉を、既存の技術スタックで実現可能かどうか、あるいは新しい技術を導入する必要があるか、という観点で翻訳する。
この翻訳作業は、単に技術的な知識があればできるわけではありません。クライアントのビジネスモデルや、その先にいるユーザーの感情までを深く理解する必要があります。
時には、クライアントの要望をそのまま鵜呑みにせず、「その目的を達成するためには、この方法よりも、別の技術を使った方がより良い結果になりますよ」と、別の言語に翻訳して提案することもあります。
この「翻訳」がうまくいくと、クライアントの皆さんの「やりたいこと」が、僕たちの「できること」にスムーズにつながり、新しい価値が生まれる瞬間を目の当たりにできます。
大手SIer時代は、決められた仕様書に基づいて開発することが多かったのですが、フリーランスとしてスタートアップ企業と向き合うようになってから、この「翻訳者」としての役割の重要性を痛感するようになりました。
技術はあくまで手段であり、目的は「人」の課題を解決することです。技術と人、双方の言葉を理解し、そのギャップを埋めることができれば、より良いプロダクトが生まれる。
これからも、この「翻訳者」としてのスキルを磨き続け、多くの人々の想いを形にするお手伝いをしていきたいと思っています。