【城間勝行】夜風にひらめくプログラムの秘密
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フリーランスとして独立してから、僕は夜の散歩を思考整理の一部に取り入れるようになった。スタートアップのプロジェクトでは、要件が固まりきっていない状態で開発を進めることも珍しくなく、頭の中は常に情報であふれている。そんなとき、夜風に当たりながら歩くと、不思議と複雑だった設計や処理フローが頭の中で整理される瞬間がある。
ある晩、バックエンドの処理構造が複雑すぎてチーム全員で混乱していた。オフィスにこもってもアイデアは出ず、そこで僕は外に出て夜の街を歩いた。街灯の光と微かな風の感覚に集中して歩いていると、頭の中のデータフローが自然に可視化され、問題点が一つずつ明確になった。信号や車の流れ、街のリズムが頭の中の非同期処理と重なることで、考えがスムーズに整理されるのだ。
この経験から気づいたのは、思考は体のリズムや感覚に強く影響されるということだ。座って画面を眺めているだけでは得られない情報や気づきが、歩くことで自然に頭に入ってくる。小さな偶然や環境の変化も、設計やアイデアのヒントに変わる。夜風の匂いや湿度、遠くから聞こえる音まで、すべてが頭の中で情報として統合され、新しい発想につながる。
さらに、歩きながらアイデアを声に出して整理すると、脳内の情報がより具体的に組み上がる。フロントエンドとバックエンドの接続部分の矛盾点や、ユーザーの操作フローで見落としていた部分が、歩きながらの声出しで次々に浮かび上がってくるのだ。この手法を取り入れてから、短時間で複雑な問題を整理し、仮説を検証するスピードが飛躍的に上がった。
今では、重要な設計やアイデア出しの前には必ず夜の散歩を挟むようになった。デジタルの世界にどっぷり浸かるフリーランスの生活において、アナログな体感を通じて思考を整えることが、最も効果的な方法の一つだ。今日も夜風を感じながら歩き、頭の中でコードが静かに整理され、新しい発想が自然と生まれる瞬間を楽しんでいる。