【城間勝行】デスクの上で踊るコードたちに気づいた日
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朝のオフィスはまだ静かで、パソコンのファンの小さな音と、窓の外から差し込む光だけが空間を満たしている。私はデスクに座り、昨日のタスクを思い出しながらノートを開いた。すると不意に、キーボードの上で小さな音楽が聞こえる気がした。いや、聞こえるというより、コードたちがまるで踊っているように私の頭の中で動き始めたのだ。
普段はただの文字列に過ぎないプログラムのコードやスクリプトが、今朝はまるで自分自身の意思を持っているかのように感じられた。ループや条件分岐が軽やかにステップを踏み、関数がリズムに合わせて跳ね回る。バグは小さなつまずきであり、エラーは一瞬の息つぎのように思えた。普段の「面倒な仕事」が、まるで目に見えないパフォーマンスに変わった瞬間だった。
私はふと、こうしたプログラムの世界にも感情が宿るのではないかと考えた。人間が書き込む一行一行に思考が込められ、試行錯誤の痕跡が残る。それを解釈する私自身も、ある意味でパートナーのような存在だ。コードが踊る様子を見守り、調整し、時には間違いを正す。仕事が単なる作業ではなく、共演になっていく瞬間に胸が高鳴った。
昼が近づき、オフィスに人が増え始めると、その魔法のような静寂は薄れていく。それでも、頭の中で踊るコードたちはまだ止まらない。会議中のホワイトボードに書き込むアイデアも、メールでやり取りする内容も、すべてがこの不可視の舞台の一部のように思える。目には見えなくても、私とコードたちは一緒にリズムを刻んでいるのだ。
夕方、デスクを片付ける時にふと思った。人間の仕事は単なる効率や成果だけで測れるものではない。見えない世界とつながり、目に見えない物語を感じる瞬間こそが、創造の醍醐味なのだと。今日の小さな発見は、明日のプロジェクトをもっと豊かにしてくれるヒントかもしれない。デスクの上で踊るコードたちに気づいた私は、これからも彼らのリズムに耳を傾けながら、新しい挑戦に臨むのだと決めた。