深夜、ひっそりとした図書館に足を踏み入れると、普段の開発現場とはまったく違う空気に包まれる。静まり返った空間の中で、机に向かう人たちの姿を観察していると、ユーザー体験やチーム運営のヒントがふと見えてくる。図書館の利用者はそれぞれ目的が違うにも関わらず、自然と秩序を守りながら行動している。その調和の取り方は、少人数で動くフリーランスの開発チームに似ていると感じた。
独立してから、僕はスタートアップを中心にプロジェクトに参加することが多い。要件がまだ固まっていない中で、柔軟に仮説を立て、試行錯誤を繰り返す開発スタイルが求められる。図書館にいる人々を観察すると、彼らがどのように本を探し、どう動線を選ぶかが自然に見えてくる。それはまるでユーザーの行動を予測してUIを設計するプロセスに通じている。
例えば、人気のある本や資料は棚の目線の高さに配置され、通路の角にはわかりやすく案内板がある。これにより、誰も迷わず目的の本にたどり着ける。Webアプリでいうと、ユーザーが迷わず目的にアクセスできる導線や情報配置に似ている。小さな工夫が全体の体験を大きく変えることを、静かな図書館で実感した。
さらに、図書館ではお互いの作業を邪魔せずに共存するために無言のルールが存在している。フリーランスで少人数チームを運営する際にも、明文化されていない暗黙のルールや思いやりが、プロジェクトの成功に大きく影響する。チーム内での作業の優先度や情報共有のタイミングを自然に調整する感覚は、図書館の秩序を観察することで学べる。
夜の図書館で過ごす数十分は、ただの静かな時間ではなく、開発チームやプロダクト設計に活かせる貴重な学びの時間だ。ユーザーの視点、チームの連携、自然な行動の流れを意識することで、少人数でも大きな成果を生むプロダクトを作れる。日常のちょっとした場所での観察が、仕事に直結するヒントを与えてくれることを、僕は図書館で再確認するのだ。