夜遅くまでパソコンの前に座っていると、どうしても視界がモニター中心になってしまう。そんなある日、ちょっと気分転換に外に出て、夜の街を歩いてみることにした。空気はひんやりとして、街灯の光がぽつりぽつりと並ぶだけの道は、昼間の喧騒とはまるで別世界だった。
ふと、街灯の光と影の落ち方を眺めていると、開発しているWebアプリのUIやデータの流れに似たものを感じた。光が当たる部分はユーザーに見える画面、影になっている部分は裏側で動く処理。どんなに見栄えのいいUIも、裏側の処理が安定していなければ、ユーザーは快適に使えない。そんな当たり前のことを、街灯の光が静かに教えてくれた気がした。
独立してフリーランスになった僕は、スタートアップ企業を中心に少人数のチームで開発を進めている。要件が固まっていないことも多く、試行錯誤を繰り返す日々だ。しかし、街の小さな光の変化を観察していると、曖昧な情報の中で何を優先すべきか、どの部分をしっかり設計すべきかの感覚が研ぎ澄まされていく。
大手SIerでの経験があるから、数千人規模の業務基幹システムも扱ったことがある。でも、少人数でスピード感を持って動く現場では、数字やドキュメント以上に「人の動きや反応」がプロジェクトの成功を左右する。街灯の光が影を作るように、僕たちの小さな判断や行動が、全体のバランスを保つカギになる。
その夜、ぼんやりと街を歩きながら思った。開発も街の光も、人の目には偶然のように見えるが、実際には細かい調整と観察の積み重ねで成り立っているということだ。どちらも、見えない部分に気を配ることで初めて全体が美しく機能する。
これからも僕はコードを書き続けるだろう。しかし、目の前の画面だけでなく、日常の小さな光や動きから学ぶことも忘れない。街の光が示すヒントは、僕にとって開発のスピード感と安定感を同時に育ててくれる大切な教材なのだ。
開発の現場も、日常も、観察と調整の連続だと考えると、毎日の仕事が少し特別に感じられる。小さな発見を積み重ねることこそが、チームの力を最大化し、プロダクトを輝かせる秘訣なのだと、夜の街灯に照らされながら実感した。