深夜、街の図書館に足を踏み入れると、普段の昼間とは違う空気が漂っていた。静寂の中、薄暗い照明が本棚を淡く照らし、どこか別世界に迷い込んだような感覚になる。誰もいないと思った館内で、ふと視線を感じた。振り返ると、窓際に小さな机が置かれ、そこに一冊の古い手帳が開かれていた。手帳にはびっしりと、未来の都市のスケッチや未知の技術のアイデアが描かれている。
ページをめくるたび、アイデアの一つひとつが生きて動き出すような感覚に襲われる。実現するかどうかもわからないけれど、この手帳の中ではすべてが可能だった。図書館の静けさの中で、僕はまるでタイムトラベルをしているかのように思えた。目の前に広がる未来都市は、自分がまだ知らない世界の一端を垣間見せてくれる。
手帳を閉じると、目の前の現実に戻る。窓の外の夜景が普段より少し鮮やかに見え、街灯の光がまるでアイデアの粒子のように輝いている。あの手帳のアイデアは、自分の中で何かを動かすきっかけになった気がした。日常に戻ると、ふとした瞬間に手帳の未来都市が頭をよぎり、仕事やプロジェクトに取り組むときの視点が少し変わったように思う。
翌日、図書館を訪ねても、手帳はどこにも見当たらなかった。まるで昨夜の体験自体が夢だったのかもしれないと思う。でも、心の奥には確かに刺激が残っていて、目の前の課題やプロジェクトを少し違う角度から考えられるようになった。未来はまだ手の届かないものだけれど、ほんの一瞬触れることで日常が少し色づくのだと気づいた。