【大嶋淑之・新潟】なぜ僕は観葉植物をプロジェクトメンバーとして扱うのか
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オフィスに置かれた一鉢の観葉植物を見つめていると、いつも妙な感覚に陥る。人間ではないのに、そこに存在するだけで場の空気がやわらぎ、会話が前向きになる。ふと、この存在を「インテリア」としてしか見ていないのは損をしているのではないかと考え始めた。もし観葉植物をひとりのチームメンバーとして扱ったら、プロジェクトはどう変わるのだろう。
水やりのタイミングを忘れると、葉がしおれて合図をくれる。逆に光を浴びて元気になれば、チームにポジティブな空気を広げる。その変化は、プロジェクトにおけるフィードバックサイクルと驚くほど似ている。小さな変化を敏感に受け取り、改善していく姿勢を、僕たちは植物から学ぶことができるのではないか。
ある日、チームで大きな方針転換を話し合っていたとき、緊張した空気が漂っていた。ふと視線をずらすと、窓際の植物がゆっくり揺れていた。風もないのに少しだけ葉が震え、なぜかその動きが「まあ落ち着けよ」と語りかけているように見えた。くだらないと笑われるかもしれないけれど、その瞬間に場の空気は和らぎ、議論は前向きな方向へ進み始めた。人はときに、言葉を持たない存在に背中を押されることがある。
植物を「無口な同僚」として認識してみると、オフィスの時間は少し違って見える。元気なときはチーム全体を明るくし、元気がないときは僕たちに小さな問いを投げかける。大切なのは、その声なき声をキャッチする感受性を持つことだ。それは、チーム内の人間関係にもそのまま応用できる。沈黙しているメンバーの表情や、Slackでの発言のトーンを読み取る感覚は、植物のささやきを聞き取ることに通じる。
プロジェクトの進行管理ツールにはタスクが並び、進捗が数値で可視化される。けれど植物は「調子が悪い」と赤字で警告を出してくれない。ただ静かに葉を垂らす。それを見てどう動くかは、僕たち次第だ。このアナログな信号をどう受け止めるかが、実はチーム力を測る試金石になっているのかもしれない。
僕は新しいプロジェクトを立ち上げるとき、必ず観葉植物をひとつ迎え入れることにしている。それは縁起物ではなく、環境センサーでもなく、ひとりのメンバーを増やす感覚だ。その存在があるだけで、チームは少しだけ柔らかくなり、言葉にしづらい空気を共有できるようになる。働く場所を彩る小さな緑は、ただの飾りではなく、僕たちの「チームダイナミクスを映す鏡」だと信じている。
そして今日も、窓際の彼がどんな表情をしているのか、出社して真っ先に確認する。葉が揺れていたら少し安心し、しおれていたら自分のリズムを見直す。そんな相棒がそばにいることで、僕はプロジェクトをもっと面白く進められる。