【大嶋淑之・新潟】映像に正解はあるのか
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フリーランスとして映像制作に携わっていると、よく聞かれる質問があります。どうしたら「正解の映像」が作れるのか。企業のプロモーション動画でも、SNS向けのコンテンツでも、成果を求める現場では必ず議論になる問いです。
ただ実際に僕が感じるのは、映像に絶対的な正解は存在しないということです。ある会社にとっては商品を端的に伝える三十秒の映像が最適解かもしれないし、別の会社にとっては社員の素の表情を切り取った二分間のインタビュー映像が価値になる。視聴者の心を動かす瞬間は、方程式のようには定まらないのです。
その不確かさは時に不安を生みます。納品前の夜、編集画面を前に「これで本当に伝わるだろうか」と考え込むこともあります。それでも僕が続けてこられたのは、不正解がない世界だからこそ、一つひとつの映像に挑戦する意味があると信じているからです。
映像は完成した瞬間に終わりではありません。公開された後、どんな人が見てどう感じるかで新しい意味が生まれます。そのプロセスまで含めて初めて一つの作品になる。だから僕はクライアントと一緒に作り上げる感覚を大切にしています。打ち合わせで交わした雑談や、撮影現場での偶然のやり取りが映像の核心を決めることも少なくありません。
正解の映像を求めるのではなく、関わる人の思いを重ね合わせて形にする。そんなプロセスを積み重ねることが、結果的に「最適解」と呼べる映像を生み出すのだと思います。
今日もまた新しい依頼を受けてカメラを構えます。そこには正解がないからこそ、試行錯誤する楽しさと挑戦する価値があります。映像制作は答え探しではなく、物語を紡ぎ続ける旅のようなものだと感じています。