「動画制作」と聞くと、カメラを回して編集する、という作業をイメージされる方が多いと思います。もちろんそれは正しいのですが、僕がこの仕事で一番大切にしているのは、実は「見えないもの」を撮ることなんです。
たとえば、ある企業のプロモーション動画を制作したときの話です。
新しく開発されたサービスは、IT技術を駆使した非常に先進的なものでした。しかし、技術的な説明を羅列するだけでは、そのサービスの「価値」は伝わりません。見る人が知りたいのは、「そのサービスを使うことで、自分の仕事や生活がどう変わるのか」という未来の姿です。
そこで僕が注目したのは、開発に携わったエンジニアや、実際にサービスを利用しているお客様の「感情」でした。
「このサービスで、今までできなかったことができるようになった」と語るエンジニアの、誇らしげな表情。 「仕事が効率化されて、家族と過ごす時間が増えた」と笑顔で話すお客様。
彼らが口にする言葉だけではなく、その背後にある「熱意」や「喜び」、「安心感」といった目に見えない感情をどう映像で表現するか。そこに全力を注ぎました。
具体的には、インタビューの際に、質問の仕方や場の雰囲気を工夫し、本音を引き出すことを心がけました。また、表情の微妙な変化や手の動きなど、言葉にならない部分を丁寧に撮影し、編集でより際立たせるようにしました。
結果として、完成した動画は、単なるサービス紹介ではなく、見る人の心に深く響く「ストーリー」になったと、クライアント様から大変喜んでいただけました。
動画制作の仕事は、単に事実を記録するだけではありません。企業の「理念」や、製品に込められた「想い」、そしてそれを使う人々の「感情」といった、形のないものをどう捉え、映像という形に落とし込むか。
そこには、単なる技術力だけではなく、相手の心に寄り添い、深く理解しようとする姿勢が求められます。
これから新しいキャリアを考えている方、特にクリエイティブな仕事に興味がある方に伝えたいのは、表面的なスキルだけでなく、人や物事の本質を見抜く「洞察力」が何よりも大切だということです。
そして、その洞察力を磨くためには、日々の何気ないコミュニケーションや、様々な人との出会い、そして多様な価値観に触れる経験が欠かせません。
僕も、これからもたくさんの人との出会いを通じて、「見えないもの」を撮る力を磨いていきたいと考えています。