深度學習を活用した入院患者の食事摂取量および栄養成分の分析・計算
入院患者の食事摂取量を効率的かつ正確に把握するため、深度カメラとディープラーニングを活用し、ミンチ形態の病院食トレイ上の食品を解析・栄養計算する研究である。従来、入院患者の食事摂取量は看護師や介助者による秤量法や、管理栄養士が患者に確認する24時間思い出し法などが主流であった。しかしこれらは時間と手間がかかり、測定誤差も生じやすい。本研究では、深度情報付きRGB画像(RGB-D)を撮影し、U-Netモデルを用いて食事トレイ上の食品を物体セグメンテーションすることで、食品の容積を推定し、レシピに基づく栄養価(カロリーとたんぱく質)を算出する。
実験では、テクスチャー調整食としてのミンチ食を実際の病院厨房で調理し、トレイ上の主菜、副菜、野菜、主食をそれぞれ一定量ずつ計測・撮影。食事前後(摂取量0%、25%、50%、75%、100%に相当)で深度画像を取得し、各メニューの容積変化と実測重量を比較した。その結果、U-Netによる食品マスクのmIoUは約0.94と高く、推定された食事摂取量の誤差率(MAPE)も摂取度合い別に5〜8%程度に抑えられた。さらに管理栄養士による目視評価との比較でも大きな差異はなく、完全に食べきった場合(100%摂取)では誤差が1〜2%と極めて低い。
本研究は、ミンチ形態など複数食材が混在する中華系病院食でも高精度な摂取量推定が可能であることを示し、今後は他病院の食事様式や他のテクスチャー食にも適用を広げることで、臨床現場の栄養ケアプロセスをサポートできる可能性を示唆している。