「ねえ、もう誰もいないんだし、前に来たら?」
麻美子は、運転席から陽子と一緒に後ろの席に座っていた隆に言った。陽子は、もう自分の家に着いて降りてしまっていた。
「それじゃね」
最後に送ってもらった瑠璃子が車を降りた。
「はい、助手席空いているよ」
麻美子が助手席の荷物を片付けてから、隆に声をかけた。
「別に、後ろでもいいよ」
「私、隆の運転手じゃないんだけど・・」
麻美子が隆に文句を言った。
「じゃ、前に移るか」
隆は、後ろの座席から助手席へ移った。
「それじゃ帰るよ」
麻美子は、隆がシートベルトを締めるのを確認してから車を発進させた。
「ね、雪ちゃんがヨットレース楽しいってさ」
「そうだね」
隆は、麻美子に答えた。
「レースで走らせるのが、すごく楽しかったみたいよ」
「ああ、一番雪ってうちの中で覚えが悪いじゃん。だから、レース一緒に連れて行ったら、少しはヨットの操船のこと覚えるかなって思って、今回レースに参加させたんだけど」
隆は麻美子に言った。
「なんか、雪の別の部分を目覚めさせてしまったみたい」
「良いんじゃない」
麻美子は笑顔で返事した。
「今年の横浜のマリーナのクラブレースは全て、雪がアクエリアスで参加するってさ」
「うん、そう言っていたわね」
麻美子が頷いた。
「あと、小島くんって、今年のアクエリアスの生徒さん」
麻美子は運転しながら話を続けた。
「彼との相性が良いみたいで、レースでのチームワーク良いみたいよ」
「そうだね。あと三浦さんとか伊賀さんたち」
隆が言った。
「アクエリアスがいっぱい人増えて賑やかになったわね」
「ああ、アクエリアスは人が少し揃って欲しいよ。一緒にクルージングに出る時も、うちらの中から何人か助っ人で向こうに乗らなくてもよくなるし」
「そうね」
「小島くんとか三浦さん、伊賀さんたち皆、レースで手になっていたよ」
隆が答えた。
「アクエリアスの良いメンバーになるんじゃないの」
「そうね」
麻美子が頷いた。
「でも、伊賀さんたちは、ヨット教室でヨットのことを覚えたら、自分たちで乗れるヨットを買うみたいだけどね」
麻美子が隆に伝えた。
「ご夫婦でヨットに乗って日本じゅうを旅したいんですって」
麻美子は、羨ましそうに言った。
「麻美子も、ラッコを自由に使って日本一周して来てもいいよ」
隆が麻美子に答えた。
「なんでよ。私1人なんだけど・・」
「良いじゃん。伊賀さん夫婦がダブルハンドで、麻美子はラッコをシングルハンドで」
「いやよ。どうせなら私も誰かと2人で旅したいわ」
麻美子が隆に言った。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など
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