クルージングヨット教室物語254
Photo by Ryunosuke Kikuno on Unsplash
「隆ぃー!何をやっているのよ」
麻美子が少し離れたところの船台の根元で陽子と2人ビールを飲んでいる隆に声をかけた。
「え、何って?」
隆が船台から麻美子に返事した。
「そんな離れたところにいないで、せっかくラッコの皆がこっちで集まっているのだから、こっちに来て、一緒に飲めばいいじゃないの」
麻美子に言われて、隆と陽子はラッコの皆が飲んでいるところにきた。
「何のお話をしていたの?」
「いや、5月の連休はどこに行こうかって話をしていただけだよ」
隆は、麻美子に聞かれて答えた。
「それだったら、こっちに来て皆と話してくれれば良かったのに」
「誰も呼んでくれないからさ」
隆が麻美子に言った。
「だって、お2人であちらでとっても良い雰囲気になっているから皆、声をかけづらいじゃないの。せっかくのデートのお邪魔をしたら申し訳ないじゃないの」
「何それ?」
「本当に、隆くんが陽子ちゃんにプロポーズでもしているのかと見えたよ」
雪も言った。
「何なんだよ、それ」
隆が苦笑した。
「そんなわけないじゃないの」
陽子が、麻美子の肩に雪崩かかりながら苦笑していた。
「あ、そうなんですか。私も、隆さんのお付き合いされている方だと思ってました」
アクエリアスの小島が陽子に言った。
「ほら、今日初めての方にも、そう見えてしまっていたのよ」
「ごめんごめん」
陽子が麻美子に編めるように、麻美子の腕にぶら下がっていた。
「それでは、本年度1回目のクラブレースの成績を発表します!」
ステージ上では、レース成績の発表が始まっていた。
本日のレース参加艇、全18艇を最下位から発表していき、
「第3位はアクエリアス!」
とアクエリアスは3位の順位だった。
もちろん着順では、もっと後ろだったが、レーティングの修正では1位のうらら、2位のプロントに続いて3番目の入賞となっていた。
これは、かなり健闘した順位では、下位にはビッグショット、ヒロなどまだまだレース艇の上位艇が数連ねる中の第3位だった。
「表彰状を取りに来てください」
ステージ上には、成績上位の結果で上機嫌の中村さんの姿があった。
「なるほど、船の性能とかでレーティングで修正して、順位を調整してもらえるんですね」
「ゴルフのハンディみたいなものですね」
伊賀夫婦が麻美子から説明してもらって答えていた。
「でも、あの着順で3位になれるんだったら、俄然次のヨットレースも頑張ってみようって気になってきますよね」
「そうでしょう、次はもっと上を目指したくなるよね」
小島と雪が話していた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など
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