クルージングヨット教室物語250
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「そういえば、アクエリアスってどこに行った?」
麻美子が呟いた。
ピピピー!
30分ぐらい前に、うららがゴールして以来、瑠璃子は何艇ものヨットがゴールする度にフィニッシュの笛を吹いて、レース艇にゴールを知らせていた。
「まだ、後もう少し。あそこを走っている」
香代が麻美子に先の方のレース海面を指差しながら教えた。
「見えるの?」
麻美子は、香代の指差した方向を眺めて、目を凝らしながら香代に聞いた。
「よく見えるわね」
麻美子は、少し老眼の入ってきた自分の眼をシバシバさせながら答えた。
「なんか見えるの?」
明子が麻美子に聞いた。
「うん、さっき隆がアクエリアスに乗っていたでしょう。隆が乗っていったアクエリアスがどこにいるのかなって思って」
「あそこにいるよ!」
明子が加代の指差した方向と同じ方向を指差して答えた。
「明子ちゃんも見えるの?」
麻美子が驚いた。
「視力いいんだ?」
「視力?」
「眼の検査」
「お母さんに毎年、健康診断に連れていってもらっているよ」
「そうなの、いくつだった?」
「いくつだったかな。忘れちゃった」
明子は麻美子に笑顔で答えた。
「でも、あそこにいるアクエリアスが見えるって、結構目が良いよね」
陽子が麻美子に言った。
「そうよね。うちの船って、目が良い子が2人になったんだ」
「そうね」
陽子が答えた。
「去年さ、隆さんがヨットに乗っていると、遠くばかり海を眺めているから目が良くなるって聞いたんだけど、1年であんまり視力が上がらなかったからショックなんだ」
陽子が言った。
「私なんか視力が悪いどころか、老眼まで入ってきたよ」
「私も老眼入ってきたのかな」
「陽子ちゃんは、さすがに老眼はまだ早いでしょうが」
麻美子は陽子に苦笑した。
「もう少しでアクエリアス戻ってくるよ」
香代が先に見えている黄色のブイを交わしているアクエリアスの姿を指差した。
「さすがに、あそこならば私でもアクエリアスの姿が見えるよ」
「トップだったのに、随分後ろの方になってしまったね」
「ね!あの順位じゃどうってことないじゃないの」
麻美子は、抜かれてしまった隆にショックを受けていた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など
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