クルージングヨット教室物語243
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「雪!自分1人でタックしたらだめだろうが」
隆は、アクエリアスのラットを操作しながら、雪のことを怒鳴っていた。
「え、はい」
「彼らは皆、今日初めてヨットに乗るんだから、雪がタックのやり方とか教えないとわからないだろう」
「あ、そうか」
雪は、隆に答えた。
「いや、初めてじゃないよな。先週も乗っているよな」
中村さんが、いつも座っているキャビンの出入り口のところに腰掛けながら、自分のクルーたちに話しかけていた。
「あ、先週そういえば一緒に深浦でお昼を食べていたんだっけ」
隆は、中村さんの言葉に思い出したように言った。
「はい。でも、まだ全然わかりませんし初めてみたいなものですよ」
そう言ったのは、今年のアクエリアスのクルージングヨット教室の生徒の小島くんだった。
「あの、覚えますので、、何でも指示して下さい」
小島くんは、隆に言った。
「ほら、雪。指示して下さいだってよ。おまえが指示してやらないとな」
隆は、雪に言った。
「私も、去年のクルージングヨット教室で始めたばかりだけなんだけど」
「あ、1年もされていたら大先輩じゃないですか」
小島は、雪に言った。
「そうだよな。1年も先にやっていたら大先輩だよな。何でも雪に聞きなさい」
隆が雪のこと無理強いしていた。
「あのさ、まだレースのスタートまだ少し時間があるから、ちょうど良いから、あそこの赤いブイとこちらの緑のブイの間を回って、少しタックの練習をしておこう」
隆は、雪に言った。
「早速先ずは、目の前の緑のブイを回ってから、向こうの赤いブイを目指すぞ、タック!」
隆が言った。
「それじゃ、小島くんは右側のウインチをしてくれる」
雪が小島に指示した。
三浦さんという同じく今年のアクエリアスのクルージングヨット教室の生徒が、小島の引こうとしているジブシートを手伝おうと手前側にあるシートを引こうとした。
「だめだよ!そんなところでシートを引いたら!」
隆が、三浦のことを怒鳴った。
「そんなところでシートを引いたら、突風が吹いたら、そのまま指ごと全部持っていかれるぞ!」
三浦は、慌てて掴んでいたシートから手を離した。
「あと、小島くん。ウインチを引く時は、手前側に指を挟むな!指をウインチに巻き込まれて潰れるよ」
小島も慌てて指を引いた。
「雪!先ずはウインチの持ち方から、シートの引き方、出し方を教えてやらないとね」
隆は雪に命じた。
それから、レースのスタート時刻が来るまでの間、何回かタックを繰り返したアクエリアスだった。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など
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