「来週はレースだよね」
「そうだね。今年初のレースだから大変だぞ」
隆が雪に言った。
「今年初のレースっていっても、うちは参加するわけじゃないでしょう」
「コミッティーやるだけだよね」
「そうね」
麻美子が答えた。
「コミッティーって旗を上げたり下げたりで、参加するよりも忙しいじゃん」
「でも、レース中はのんびりしていられるし」
香織が言った。
「まあ、そうだけどね」
「それじゃ、帰ろうか」
皆は、深浦ボートパークから戻って来て、ラッコの後片付けも終わり、横浜のマリーナエントランス内のソファに寛いでおしゃべりをしていた。
「それじゃね」
雪は磯子方面に歩きなので、皆と別れて帰路についた。
「荷物半分持つよ」
陽子が麻美子の持っている荷物を半分持った。雪以外の皆は、マリーナの駐車場に行き、そこから麻美子の運転する車で帰るのだった。
「明子ちゃんはヨットどうだった?」
隆は、帰りの車の中で明子に聞いた。
「おもしろかった!」
明子は隆に答えた。
「そういえばさ、隆さんって私たちには香織とかって呼んでいるのに、明子ちゃんだけは、明子じゃなくて明子ちゃんなんだね」
香織が言った。
「え、そういえばそうだな」
隆は香織に答えた。
「なんでだろうな。俺もあんまり気にせずに明子ちゃんって呼んでいたな」
「まあ、明子ちゃん可愛いものね」
陽子が言った。
「そうかもな」
「そのうち慣れてきたら、明子ちゃんじゃなく明子呼びに変わるかもね」
陽子が言うと、そうかもしれないと隆は頷いていた。
「慣れてきたら、明子になるんじゃなくて、陽子ちゃんたちの方のことを陽子ちゃんって呼ぶように変えなさいよ」
麻美子が運転しながら、隆に言った。
「いや、別にそれでも良いけど。陽子とか他の皆は陽子ちゃんって呼んだとして、麻美子のことは麻美子ちゃんって呼ぶのなんか気持ち悪くないか」
「そんなことないよ」
「麻美子ちゃんが恥ずかしければ、麻美ちゃんでも良いんだよ」
皆から一斉に言われる隆だった。
「まあ、私が麻美ちゃんって呼ばれるようになっても、私は隆のことは隆って呼び続けるけどね」
麻美子は笑顔で隆に言った。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など
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