クルージングヨット教室物語236
Photo by Yanhao Fang on Unsplash
「お昼を食べ終わったら、京急ストアにお買い物に行くか」
隆が昼食を食べながら、皆に言った。
「もう必要なものは皆、買ってきてあるよ」
麻美子が隆に言った。
「でも、何か買い忘れはあるだろう」
隆が再度、麻美子に聞き返した。
「ほら、来週は今年最初のレースがあるだろう。買ってる時間無いだろうし、来週のお昼とか」
「来週のお昼は別に今、買わなくても」
麻美子が笑いながら、隆に答えた。
「ね、なんかデザート食べたくない?」
陽子が皆に提案した。さっき明子と話していたことで、隆は今日初めて深浦に来た明子のことを深浦の街へ連れ出して、散歩して来たいのだということに気づいていた。
「そうだ!なんかデザートを買いに行こう」
「デザートね。なんか食べたいデザートある?」
「ケーキ!」
麻美子に聞かれて香代が答えた。
「それじゃ、ケーキを買いに行きましょうか」
麻美子が言って、皆は深浦ボートパークの近くにある京急ストアへ買い物に行くことになった。
「明子ちゃんは、深浦の街には来たことあるか?」
「ううん」
明子は、隆に首を横に振った。
「それじゃ、京急ストアへ行く前に少し街中を散歩してこようか」
「いいよ」
ヨットを降りて、深浦ボートパークのポンツーンから陸上に出ると、目の前の公園を抜けて駐車場に出た。駐車場にはたくさんの猫たちがくつろいでいた。
「猫だ!」
「かわいいね」
皆は、しばらく猫たちと戯れていた。
「そろそろ行くか」
駐車場を出ると、京急ストアの前を通り越して、少し街中をぐるっと一周してくる。
「マリーナからこんな近くにお蕎麦屋さんがある」
「お蕎麦だけじゃなくて、いろいろ定食もあるみたいね」
「こういうお蕎麦屋さんって絶対に美味しいと思う」
「ね、今度ここにお昼を食べにこない」
皆は、お蕎麦屋さんを後にすると、今度こそ京急ストアへと戻っていった。
「あれ、何?猫か?」
隆は、すぐ先のゴミ置場にいる動物と目が合った。
「タヌキじゃん!」
横須賀の深浦の街は、海から少し入ったところは山になっていて、タヌキも住んでいた。
「ほら、これ食べるか?」
隆がポケットの中を探って、煎餅を一つ出した。タヌキは警戒しながらも、口だけ前に乗り出して、隆の持っている煎餅を加えると、少し離れて、そこで煎餅を食べていた。
「タヌキさん」
「タヌキさんだね」
タヌキは煎餅を食べ終わると、皆の方を振り向きつつ、山の方へと帰っていった。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など
東京国際ボートショー開催中の横浜マリーナではクルージングヨット教室生徒募集中!