クルージングヨット教室物語228
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「なんで、明子のところに迎えにいくの?」
隆は、麻美子の運転する車の助手席に座っていた。
「良いでしょう、別に」
「まあ、それは良いけどさ。今までだって、別に他の子のところは迎えに行っていないのに」
隆は、不思議そうに麻美子へ聞いた。
「そんなに、明子って辞めちゃいそうかな」
隆は呟いた。
「辞めちゃいそうって?」
「え、ヨットを辞めちゃいそうだから、迎えに行くんじゃないのか」
「うん、そうじゃないけど」
麻美子は言った。
「明子ちゃんって、普段の日は、家で家事手伝いだから日曜ぐらいは逆にヨットへ乗りたいんじゃないの」
「ああ、だったら別に自分の足でマリーナまで来るだろうが」
隆は、麻美子に言った。
「ね、隆は明子ちゃんと先週会ってみてどう思った?」
「どうって?なんかちょっとおっとりした感じの子だな」
「うん」
麻美子は、運転しながら隆に答えた。
「明子ちゃんって、障害があるわけじゃないんだけど、少し頭の回転が鈍い子でね」
麻美子は説明した。
「私、クラブハウスに迎えに行った時、他の生徒にロープワークがうまく結べなくてバカじゃないとか言われていたのよね」
「何それ?」
隆は、麻美子の横顔を覗き込んだ。
「バカって、そんなこと言ったやつがいるのか?俺が後でマリーナに行ったら、そいつに文句を行ってやるよ。どいつだか覚えているか?」
「その件は、もうどうでも良いから」
麻美子は、隆のことを睨みつけた。
「その時にさ、松浦さんと話して、うちで預からないかとか提案されてさ」
麻美子は、松浦さんとの話を隆にしていた。
「ごめん、私の独断で・・良いよ。ラッコで預かるって言ってしまったの」
「へえ」
「それで、明子ちゃんがラッコの配属になったの」
「別に良いんじゃないの」
隆は、麻美子に言った。
「うちはさ、香織だっているし」
「だから、明子ちゃんは別に障害者ってわけではないの!」
麻美子は、障害者扱いする隆のことを怒鳴っていた。
「ね、隆」
「え、なに」
「絶対に今の話は誰にも言ったらダメだからね」
隆は麻美子に頷いた。
「絶対にダメよ!」
麻美子は、隆のことを念には念を入れて釘を打っていた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など
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