「何か食べる?」
「向こうに着いてからにしましょう」
マッキーは、機帆走で横浜のマリーナまで直帰して、向こうに着いてからお昼は食べることになった。
「そろそろ、お昼ごはんの時間じゃないか」
隆は、アクエリアスの艇上で、今ラットを握っている陽子に言った。
「お昼、どうするの?」
陽子が隆に聞き返した。
「なんかあるよ」
キャビンの出入り口に腰掛けていた中村さんが、ギャレーの中を覗き込みながら答えた。
「カップ麺とか・・」
「陽子さ、ラッコの側に寄ってみ」
隆は、陽子に言った。
「なんか作っているよね。麻美ちゃんが」
陽子は、隆に言われて、アクエリアスの船を前方を走っていたラッコに近づけた。
「香代、ずっとラットを握っていないか」
隆は、ラッコのデッキ上でラットを握っている香代の姿に気づいた。
「逆に、他の人は誰もラッコのラットを持っていないよね」
陽子が笑顔で言った。
「ずっと持っていて疲れないのかね」
「香代ちゃん若いし。本人も持っている方が好きなんじゃないの」
陽子が隆に答えた。
「アクエリアスが近づいて来たよ」
ラットを握っていた香代が、麻美子のことを呼んだ。
「そうね、多分お腹が空いてきたんでしょう」
麻美子は、香代に答えた。
「パスタを茹でたんだけど、ミートソースと一緒にお鍋で渡すから、お皿に盛り付けて」
麻美子は、隆にパスタのお鍋を手渡した。
「そっちのパスタは?」
「私たちの分は、もう1個ある」
麻美子が答えた。
「お鍋、中で盛り付けて来るね」
瑠璃子が隆からパスタ鍋を受け取ると、キャビンに入った。
陽子は、お鍋の手渡しが終わったのを確認すると、横付けしていたラッコから離れた。
「そうだ、香織!」
アクエリアスがラッコから離れる前に、隆が香織を呼んだ。
「なに?」
「後で、香代ちゃんとラット代わって、横浜のマリーナに着岸する手前まではお前がラットをやれよ」
隆が香織に命じた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など
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