クルージングヨット教室物語179
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「中村さん、今回はよろしくお願いします」
陽子、瑠璃子と一緒にアクエリアスに乗りこんだ隆は、中村さんに言った。
「こちらこそ宜しく」
中村さんは、アクエリアスのキャビン入り口から顔を出しながら返事した。
「出航しますか」
自分では、ラットを握る気も無さそうな中村さんが、キャビン入り口に腰掛けたまま、隆に言った。
「出ますか」
香代が操船しているラッコが、ちゃんと無事に横浜のマリーナのポンツーンを離れて出航したのを確認した隆は答えた。
「陽子、瑠璃子出航しよう」
特に、中村さんが操舵席には移動しそうもないので、隆がラットを握ると2人に言った。
「私、前を外してくるね」
陽子は、船の船首の舫いロープを外しに行った。瑠璃子が船尾の舫いを外す。
舫いロープが外れて、アクエリアスも横浜のマリーナのポンツーンを離れた。
隆が特に指示をしなくても、舫いロープを片付け終わった2人は、引き続きフェンダーを船体サイドから外して片付けていた。
「フェンダー片付け終わったか、それじゃメインセイルを上げるぞ」
2人の作業状況を確認しながら、隆はメインセイルの上げるタイミングを指示していた。
「メインハリは、こっちのシートだったよね」
「スピンがこっちだよね」
陽子と瑠璃子は、たくさんあるロープを1本ずつ確認してから、セイルを上げた。
「ラッコだったら、普段から乗っているから確認しなくても、慣れでどのシートを引いたら良いかわかるんだけどね」
「普段乗り慣れていないヨットだと、シートの位置で迷うよね」
2人は、シートを引きながら話していた。
「この風じゃ弱すぎるから、ジブは出すのやめてエンジンで行こうな」
「うん、そうだね」
セイルを上げ終わった陽子がコクピットに戻ってきて、隆の脇に腰掛けると返事した。
特に、陽子が隆の頭を撫でてあげているわけではないが、こちらは普通に正常運転で隆が指示を飛ばして、2人がセイルなどのトリムをおこなっていた。
「香代、あいつちゃんと他の子たちに指示を出していないんだろう」
隆は、アクエリアスを操船しながら、少し先を走っているラッコがいつまで経っても、メインセイルも上げずに走っている姿を確認して、陽子に言った。
「香代ちゃん優しいから、そういう人に指示するのしにくいんだろうね」
「香代ちゃん、あの中じゃ一番年下だしね」
瑠璃子も言った。
「そうだよな。麻美子に雪と周りおばさんばかりだものな」
隆が、ラッコの艇上を確認して言った。
「香織ちゃんも、私と同じでもうじき三十路突入だしね」
「香織もおばさんってことか?後で、向こうに着いたら、陽子がおばさんって言っていたよってよく伝えておくよ」
隆が笑いながら、陽子に言った。
「大丈夫、私も香織ちゃんも、おばさんの自覚あるから」
陽子はも笑顔で隆に答えた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など
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