クルージングヨット教室物語174
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「ずいぶんきれいになったね」
麻美子は、アクエリアスの船底を見渡して答えた。
「ここら辺がすごくきれい!」
キールの手前あたりを指差した。
「そこは、陽子ちゃんが塗ったところ」
「そうなんだ。ムラとかも何もないしプロじゃない」
麻美子は、陽子に言った。
「私のところって、けっこうムラだらけ」
香織が自分の塗ったところを見返しながら言った。
「私、こういうの下手なんだよね。美術的センスがゼロなのよ」
「そうなの?学校で、お絵かきの授業とかないの?」
隆が、香織に聞いた。
「だって、お絵かきの先生は、別に美術の先生がいるもの」
「そうか」
塗り終わったアクエリアスの船底の下でお喋りをしていた。
「さて、船を海上に下ろすかな」
中村さんが言った。
「もう来週、クルージングに出るのだし、今週はずっとポンツーンに泊めておくかな」
「なんか下ろすと、また貝が付いちゃいそうで勿体無い」
麻美子が中村さんに言った。
「確かに。でも下ろさずに陸上に置いておくわけにもいかないしな」
中村さんが笑っていた。
「お姉ちゃん!」
午後の練習を終えて、陸上に戻ってきたジュニアヨット教室の生徒が呼んでいた。
「え」
女性の多いラッコのクルーたちは、呼ばれた方を振り向いた。
「あ、私か」
お姉ちゃんと呼ぶので、若い陽子ちゃんや香織ちゃんのことかと思って反応していなかった麻美子が気づいて、少年たちのところへ走っていった。
「私も、最近はお姉ちゃんなんて呼ばれること、お店の店長ぐらいしかないから、呼ばれ慣れていなくて陽子ちゃんたちかと思って気づかないよ」
雪が走っていく麻美子の姿を見ながら、隆に話した。
「一応、麻美子も自分がおばさんだって自覚は持ち始めてはいるんだ」
隆が言った。
「隆さん、今の言葉はペナルティね」
「あ、ごめんごめん」
隆は、瑠璃子に答えた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など
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