クルージングヨット教室物語167
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「さあ、出航準備するよ」
隆は、船台に載っかっているラッコの船体に脚立をかけて登った。
陽子や香織も、後に続いて脚立を登り、デッキ上に上がった。
「メインセイルのカバーを緩めて、ハリヤードに繋ごう」
陽子と香織は、セイルの準備を始めていた。
「今年のラッコは、ヨット教室の生徒どうしようか?」
隆は、2人に聞いた。
「人数的には、ラッコのクルーはもう十分いるから、今年は生徒を取らなくても良いんだけど」
「そうか、そうだよね」
陽子は、隆に答えた。
「私も、アクエリアスからラッコに来てしまったしね」
申し訳なさそうに、香織が答えた。
「香織は良いんだよ。香織と一緒にヨット乗っていると皆も楽しいしね」
隆は、香織に言った。
「1人ぐらいは生徒を取ったら」
香織が、隆に言った。
「1人っていうのは取れないのかな」
「別に1人っていう取り方もできるんじゃないの」
隆は、香織に答えた。
「もし、ラッコで今年も生徒を取るとしたら、今度は、俺は何も教えないから、陽子や香織たち皆で生徒にヨットのことを教えてあげてよ」
「それは良いかもね。人に教えるのって、自分のためにもなるし」
養護学校の先生の香織が賛成した。
「今って、いつもヘルム持っているし、香代ちゃんがボースンなんだから、香代ちゃんが中心になって教えられると一番良いのかもしれないけど」
陽子が、隆に言った。
「そうだよな。そうだよ、香代に教えさせようか」
隆が賛成した。
「いや、あいつはヨットは上手いんだけど、人に教えたりするの苦手そうだから、あいつにそれやらせたいね」
隆は言った。
「あいつって?」
脚立を登って来た瑠璃子が聞いた。
「香代のこと」
「香代ちゃんか、私の悪口かと思った」
「瑠璃ちゃんの悪口なんか言わないよ。うちの1番の優等生なんだし」
隆は、瑠璃子に答えた。
「え、上架するんですか?」
麻美子は、加代とマリーナの敷地内を歩いていると、海上からマリーナのクレーンに載せられて、陸上に上がってきたアクエリアスの姿を発見して、中村さんに声をかけた。
「そう、船底をきれいに塗り直そうと思ってね」
中村さんは、クレーンに載せられたアクエリアスから降りて、麻美子たちのところにやって来た。
「え、中村さんお1人?」
麻美子は、アクエリアスに乗っていたのが中村さん1人だったことに気づいた。
「そう、今うちの船はクルーが誰もいないから」
中村さんは、麻美子に答えた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など
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