「こんばんは」
隆は、ラッコのキャビン内への扉を開いて、船内に入った。
「お帰りなさい!」
もう既に、船内にはラッコのメンバー全員が揃っていて、入って来た隆のことを出迎えた。
「なんか良いな、キャビンに入ってお帰りなさいって出迎えられるの」
「そうでしょう」
陽子が、隆に同意した。
「もうパーティーはだいぶ始まっていたの?」
麻美子が皆に聞いた。
「うん、そうでもないけど30分ぐらい前から始めていたかな」
瑠璃子が、麻美子に答えた。
「香代ちゃんも来れたんだ」
麻美子は、香代の横に腰掛けながら話していた。
「夕食は、ちらし寿司?あ、違うんだ」
隆は、テーブルの上にのっているピザのお皿を眺めて、訂正した。
「本当は、ちらし寿司にしたかったんだけど、ローゼンでピザを買って戻って来た後で、ちらし寿司のことに気づいたの」
香織が、隆に言った。
「そう思ったからってわけじゃないけど」
麻美子は、手に持っていた風呂敷をテーブルの上に載せた。
「開けてもいい?」
風呂敷の中身を開けると、重箱にちらし寿司が入っていた。
「あ、ちらし寿司!麻美ちゃんが作ったの?」
麻美子は頷いた。
「ね、陽子。さっきさ、気持ち悪かったよ。ホラーだよ、ホラー」
隆は、陽子の隣に腰掛けながら、話しかけた。
「なに、どうしたの?」
「駐車場からマリーナまで来るときにさ、道が真っ暗だから怖いとか言っちゃってさ、麻美子が俺の腕を掴んじゃってさ」
「え、そうなの。それで隆さん、ちゃんと守ってあげた?」
「いや、このデカい麻美子が腕を掴んで歩きにくくてたまらなかったよ」
「ふーん」
陽子は、隆の話を聞いていた。
「私たちって、さっきまで瑠璃ちゃんの会社の上司のおじさんの悪口とか、陽子ちゃんの朝の通勤で出会った痴漢の話とかしていたじゃない」
「そうだね」
「ぜんぜん雛祭りらしくない、色っぽくもない話しかしてなかったけど」
雪が言った。
「今夜の雛祭りで、今日一の雛祭りらしい話じゃないの」
雪は、夜道で隆の腕を掴んでいたという麻美子の話を聞いて感想を言った。
「確かにそうだね!」
皆は、雪に納得していた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など
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