ジュニアヨット教室物語63
Photo by Naomi Ishida on Unsplash
「ちょっと横浜ベイサイドマリーナまでドライブに行かないか」
その翌週の土曜日、お父さんは、洋ちゃんに声をかけた。
「え、ベイサイドまで何をしに行くの?」
「何ってこともないけど、ただのドライブだよ」
「ドライブ?」
「ほら、ベイサイドにはアウトレットモールとか色々あるだろう」
「あ、コート!学校に着ていく上着が無いって話してたやつのこと」
洋ちゃんは、お父さんに聞いた。
「あ、そうそう。ベイサイドのアウトレットにはユニクロもあるだろう」
「行く行く!ユニクロに良い上着があるんだよ」
洋ちゃんは、お父さんの誘いにのっていた。
「表が紺色でさ、裏が緑のチェックになっているやつ。かっこ良い上着があるんだよ」
車の助手席に座ると、前にユニクロで見かけた上着の話をしていた。
「そうなのか、でも、まだ冬には早すぎないか」
「え、その上着は、冬用ではないよ。ちょうど学校の行き帰りに羽織るのに良いんだよ」
「そうなのか」
洋ちゃんの通っている中学校はには、特に制服が無いので皆、自由な服装で通っていた。
「お前の学校は、けっこうファッションに拘っている生徒が多いのか」
「ファッションに拘っているというか、うちの学校は制服が無いから、その代わりに何を着て行こうかと毎日頭を悩ましている子は多いよ」
「制服無いっていうのは、逆に大変なんだな」
「うん」
「女の子なんかは、もっと毎日の服装選びで大変なんだろうな」
「女、うちの女は皆、制服無いし楽なんじゃないいn。スカートなんてはく子誰もいないし」
「皆、ズボンばかりなのか」
「うん。クラスでスカートはいている女って殆ど・・いや、スカートの女って見たことないかも」
「ほお」
お父さんは、車を運転しながら、息子の話を聞いていた。
「ちょっと、ユニクロに行く前に、そこも覗いてみるか」
ベイサイドの駐車場に車を停めると、車を降りて歩きながら、洋ちゃんに声をかけた。
ユニクロの脇に建っているYAMAHAのマリンショップだった。店内に入ると、小型のモーターボートが飾られていて、その向こうにミニホッパーが置かれていた。
「これは先週、山中湖で乗ったヨットだろう」
お父さんは、展示されているミニホッパーを眺めた。
「あ、本当だ!ミニホッパーだ」
洋ちゃんも、展示艇のミニホッパーの側に行き、ティラーやメインシートを触っていた。
「でも、このミニホッパーのセイルって山中湖のよりもカラフルで綺麗だね」
洋ちゃんは、お父さんに言った。
山中湖にあったミニホッパーは、ただの真っ白いセイルだった。今、ここに展示されているミニホッパーのセイルは、オレンジや黄色などカラフルにボーダー柄になっていた。
山中湖のミニホッパーだけではない、ヨット教室にあるミニホッパーも白いだけのセイルだった。
「こんなカラフルで綺麗な色をしたミニホッパーは初めてかも」
「お前の口から綺麗とかって言葉が出るなんて珍しいな」
「画家ですから!これでも、毎月、健ちゃんの家の絵画教室に通っていますから」
「そうか、美的センスは人よりある方なのか」
「もちろん」
洋ちゃんは、嬉しそうにお父さんに答えていた。
「いかがですか」
「良いヨットですね、先週、この同じヨットに山中湖で乗ったんですよ」
声をかけてきたYAMAHAの店員と少し話した後で、お父さんは、展示場の椅子に腰掛けて、待っていた洋ちゃんに声をかけた。
「うん、どこに行くの?」
「ユニクロに行くんじゃないのか」
「あ、ユニクロ!行こう行こう」
洋ちゃんは、お父さんとユニクロに向かって歩いていた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など
横浜のマリーナ クルージングヨット教室生徒募集中!