ジュニアヨット教室物語62
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「お母さんも乗ってみる?」
洋ちゃんは、もう1回着岸すると、お母さんに聞いた。
「そんなさっきみたいに遠くには行かないよ。すぐ、そこを少しだけ周ってくるだけだから」
「そうね、じゃ、せっかくだし、少しだけ乗ってこようかしら」
お母さんは、洋ちゃんと一緒にヨットへ乗り込んで、湖に出た。
「なんか、風を受けて走っているのは気持ち良いわね」
ほんのすぐそこを一周してきただけだったが、お母さんは乗った感想を呟いた。
「あなたには、色々な教室に通わせてきたけど、サッカー部とかテニス、ゴルフ教室、ヨット教室とやっぱり運動系の教室はなんでも得意ね」
お母さんは、洋ちゃんに言った。
「その代わり、運動系じゃない教室は、からっきし駄目よね」
「え、健ちゃんのお父さんの絵画教室は、ちゃんと続いているじゃん」
「あれだって、健ちゃんのお父さんが描いている時に比べると、あなたのは、すぐに飽きてしまって集中力に欠けるじゃないの」
「そうかな」
洋ちゃんは、お母さんに見透かされた気がしていた。
「よし、もう1回乗りに行こうか」
お父さんが、洋ちゃんに言った。
「え、また」
「ああ、お父さんは、もう一周ぐらい乗ってきたいな」
お父さんが言った。
「良いじゃない。もう1回ぐらいお父さんと一緒に乗っていらしゃいよ」
お母さんは、洋ちゃんに伝えた。
「お父さんは、ヨットに乗ってみたくて、ここまで来たんだし、いつも毎日会社で働いていて疲れているのに、一生懸命あなたのことを、ここまで連れて来てくれたんだし」
洋ちゃんは、お父さんと一緒にもう1回ミニホッパーで湖に出た。
「今度は、お父さんがティラーを持ってみる?なるだけ、メインシートを引きすぎないようにして、スピードが出ないようにするから」
お父さんがティラーを持つと、洋ちゃんは前方でメインシートを持っていた。
洋ちゃんは、ヒールがきつくなってくると、事前にメインシートを緩めて、沈しないようにしていた。
「さあ、そろそろ暗くなりそうだな」
2人で湖をぐるっと一周してくると、夕刻の時間になっていた。
「暗くなる前に、横浜に向けて帰ろうか」
「明日は、あなたも会社ですし、洋ちゃんも学校ですものね」
お母さんは、お父さんに賛成した。
ミニホッパーを陸に上げて、艤装を解いてから片付けると、ヨットハーバーに返した。
「お腹は空かないか?」
「ううん、大丈夫」
「家まで持ちそうか?」
「家まで?家に着くまでは持たないかもしれない」
洋ちゃんが、お父さんに答えると、
「帰りに、どこか美味しそうな店があったら、夕食は寄っていきましょう」
お母さんが言った。
それまで持ちそうもなかったのか、お父さんはヨットハーバーの前にあったコンビニに寄って、そこでおにぎりと飲み物を何個か購入して戻って来た。
結局、三連休最終日の夜は、道路が大渋滞していて、夕食のお店に立ち寄っている時間がなく、お父さんがコンビニで買って来たおにぎりで夕食を済ますことになった3人だった。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など
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