ジュニアヨット教室物語54
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「なんか動きが素早いな」
洋ちゃんは、ミニホッパーの反応の鋭さに驚いていた。今まで乗っていたOPは、のんびりと落ち着いた感じのもさっとした動きなのに対し、ミニホッパーの動きは機敏だ。
「わ、わー、速い速い、おいおい、ひっくり返る」
ポンツーンを離れて、沖に向かっている途中で、ミニホッパーは、風に煽られ、ヒールして斜めになっていき、そのまま横倒しになってしまった。
ポチャーーン
ミニホッパーが完全に横向きに倒れてしまうと、洋ちゃんは船体に乗り続けることができずに、海の中に落っこちてしまっていた。
「うわ、助けてー」
海の中で、洋ちゃんはボートで出てきた先生に向かって叫んだ。
「ほら、早く船に戻らないと、そのまま船が沖に流れていってしまうぞ」
片桐先生は、ボートの上から洋ちゃんに向かって叫んだ。
「横向きになっているヨットに行って、そのまま立てるんだ」
片桐先生は、洋ちゃんに説明した。
先生の言う「立てる」の意味がよくわからなかったが、洋ちゃんは、ひっくり返っているミニホッパーの側まで泳いでいくと、船体に捕まった。
「そのまま、ミニホッパーのセンターボードによじ登れ」
片桐先生の言う通り、洋ちゃんはミニホッパーの海の上に出ているセンターボードによじ登った。洋ちゃんがセンターボードに登ると、重みでセンターボードが沈んだ。
「そしたら、そのままセンターボードの上を持ったまま、船を立たせる」
センターボードが海の中に沈むと、反対に海の下に沈んでいたマスト、セイルが海の上に浮かび上がってきて、元のように船体が上向きに戻った。
「ほら、ヨットが元通りに立ち上がっただろう」
片桐先生は、洋ちゃんに言った。
ミニホッパーは、誰も乗っていない状態で、海上に浮かんでいた。
「ほら、早くミニホッパーに乗れ」
片桐先生に言われて、洋ちゃんは海からヨットの上に上がろうとしていた。
「後ろがら乗るんだ!横から乗ったら、また重みでひっくり返ってしまうだろう」
洋ちゃんは、船の後部の、平べったくなっているところから船の上へ上がった。
「そう、そうやれば、船がひっくり返ってもすぐに立たせることができるだろう」
片桐先生は言った。
「うまくなってきたら、ヒールしてひっくり返るなと思ったら、船の底側にあるセンターボードに跨げば、自分の重みでセンターボードが元に戻るから、戻る前にまた跨いで、船上に戻れば、全く濡れずに沈起こしができるようになるから」
片桐先生は、洋ちゃんに伝えた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など
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