ジュニアヨット教室物語52
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「それがマストで、セイルが開くのですね」
松田は、佐々木が船体にマストを立てているのを見て、佐々木に聞いた。
「ええ、そうです」
佐々木は、松田に答えた。
「そして、これがセンターボードといって船の横流れを防ぐもの、こっちがラダーです」
「それを、後ろに付けて、左右に動かして、船を方向転換させるんですね」
「そう、よくわかるじゃん」
佐々木は、松田の勘の鋭さに驚いていた。
「なんとなく見ていればわかるよ」
松田は、佐々木と一緒にヨットの艤装を終えると、横浜のマリーナのスロープから船を降ろした。
「先に乗っていいよ」
佐々木に言われて、松田は海に浮かんだヨットに乗り込んだ。
「俺も乗るから、ちょっと待ってね」
佐々木は、松田が乗り込んだのを確認してから、自分も同じヨットに乗った。
「これを真っ直ぐに持って、船を右折とか左折とかしたい時に動かせば良いのですか」
「うん、気をつけなければならないのは、右折する時は左に舵を押してと逆にすること」
佐々木は、松田に説明した。
「なるほど、左で右に行って、右だと左に行くんだ」
松田は、初めて握るラダーを操作しながら、その感覚を確かめていた。
「なかなか上手いじゃん」
佐々木は、船の前端でメインシートを操作しながら、松田に言った。
本当は、今日初めてヨットに乗るのだし、松田にメインシートを操作してもらって、自分がティラーを握って、ラダーを操船しようと思っていたのだが、全然上手に松田は操船できていた。
「なんか上手いな。もしかして、俺よりも上手かもしれない」
松田は、洋ちゃんのように遊び半分でサッカー部に入部しているわけではなく、スポーツ万能でバレーボール部でもすぐレギュラーになれるスポーツ派だった。
ヨットも、持ち前のスポーツ感覚で、すぐに操船に慣れてしまっていた。
「練習だけど、これからボートの先生が笛を吹いて、皆でヨットレースをやるんだ」
佐々木は、松田に説明した。
「コースとかわからない時は、俺が説明するから、そのままティラーを握って、佐々木がレースで走らせてみないか」
「うん、やってみる!」
松田は、ヨットの感覚をすぐ理解してしまって、午前中のレースをトップでゴールしてしまった。
「何、お前。いくら何でも今日初めて乗るのに速すぎだよ」
海から戻ってきて、洋ちゃんは1等を取ってしまった松田に文句を言っていた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など
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