ジュニアヨット教室物語45
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「今日は、なんか楽しかったな」
松田は、横で眠っている洋ちゃんに話しかけていた。
夜、玄関奥のクローゼットに入っている折り畳みのベッドを持ち出して、洋ちゃんの部屋のベッドの横に広げて並べると、そこに松田が寝ていた。
「あーあ、楽しかったですね」
洋ちゃんも、自分のベッドに横になりながら、松田に返事した。
「やっぱ、軍服で米軍のところに行ったと言うのが評判良かったですよ」
洋ちゃんは、松田に答えた。
「いや、米軍よりもヨット教室に通えるっていうのが一番良かったですよ」
洋ちゃんは、米軍住宅地でのハロウィンのことを回想していたが、松田は、さっきお母さんと話していたヨット教室のことを回想しているようだった。
「洋ちゃんも、先月に初めて乗ったんですよね」
「そうね」
「怖くなかったですか。何の問題もなくヨットに乗れました?」
「別に、普通に乗れたけど」
松田は、相当ヨットに乗れるのが楽しみのようだった。
「まだヨット教室に通えるかどうかわからないじゃん」
「え、なんでよ」
松田は、洋ちゃんに聞き返した。
「前日に、またお前の家に泊まりに来て、日曜日にヨット教室に通えるんだろう?」
「うちのお母さんは、そう言っていたけど」
洋ちゃんは、松田に言った。
「お前のお母さんがヨット教室に通ってもいいって言うとは限らないだろう」
「ああ、確かに。この間、うちの一番上の姉ちゃんも大学に落ちて一浪しているしな」
松田は、洋ちゃんに言われて嫌なことを思い出していた。
「その下の姉ちゃんにも、お前は一浪しなくても大学に合格するように、今から勉強しておけってさんざん言われていたものな」
松田の家は、上の姉ばかり3人もいる、その末っ子が松田だった。
「それは、お前にも勉強しろって言われるぞ、きっと」
「だよな。ヨットなんて横浜くんだりまで来てやっている場合じゃないって言うよな」
松田は、自分の母ちゃんの顔を思い浮かべて暗くなってしまっていた。
翌日、2人は目を覚ました。
翌日は土曜日だけど、半日だけ授業も普通にあって、午後からは、洋ちゃんはサッカー部、松田はバレー部の部活があった。
朝起きて、着替えると折り畳みベッドを片付けてから、台所に行った。
「おはよう」
お母さんがもう目覚めていて、2人の朝食を作ってくれていた。
「お父さんは?」
「お父さんは、もう出張で大阪に出かけた」
お母さんは、洋ちゃんに答えた。
「そうだ、松田くん」
2人がテーブルの席に座って、朝食を食べていると、
「昨日、松田くんのお母さんと電話で話したんだけど、ヨット教室の話をしたら、それは良いわねとお母さんも乗り気になっていたわよ」
「本当ですか!?」
松田は、目をキラキラさせていた。
「姉きが一浪したとか、勉強もっとしなきゃみたいなことは言ってませんでしたか?」
「特に言ってなかったわよ」
お母さんは、松田に返事した。
「そうですか」
「ああ、お姉ちゃんが浪人中って話はしていたけど、あなたのことは、日頃からちゃんと勉強もしているみたいだし、不安はないとかって言っていたわよ」
「そうですか、良かった」
「松田くんは、日頃から勉強もちゃんとしているの?」
「ええ、そんなでもないですけど。ある程度は」
「それは偉いわね。むしろ、日頃から勉強しなきゃは、うちの洋ちゃんの方だわね」
お母さんは、洋ちゃんの方をチラ見しつつ言った。
「あ、そろそろ時間、行ってきまーす!」
こちらに飛び火しそうなので、洋ちゃんは慌てて席を立った。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など
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