ジュニアヨット教室物語35
Photo by Buddy Photo on Unsplash
「また、先週みたいにスタートダッシュしたかったのに・・」
洋ちゃんは、ラダーを操船しながら呟いていた。
「そうそう他のヨットだって、スタート時間に遅れてはくれませんよね」
健ちゃんは、洋ちゃんに答えた。
「なんか、他のヨットも皆、同じぐらいにスタートしているから、俺らが独走することもなく、皆と同じ距離でコースを走ってしまっているよな」
洋ちゃんは、また独走できなかったことを悔しそうにしていた。
「その先でタックして、俺らは左方向から風上のブイを目指そうか」
洋ちゃんは、健ちゃんに伝えた。
前方を走っていた佐々木や片桐のヨットとは、別のコースを取ることにした。
「このまま、左方向を進みつつ、その先でタックするよ」
タックをすると、正面のブイを目指して走って行く。
「よし、タック!」
ブイの手間でタックすると、反時計回りでブイを回航した。
コースの右方向よりも、左方向の海面の風が良かったらしくて、洋ちゃんたちのヨットは、片桐のヨットよりも早くブイにたどり着けて、回航できてしまった。
「よし、このまま、またゴールまで1番で行くぞ!」
洋ちゃんは、一緒に乗っている健ちゃんに叫んだ。
「はい!」
⑵人のヨットは、ゴールラインを目指して走って行く。
「このままだと、本当に1番でゴールできそうだ」
洋ちゃんは、後ろを振り返って、背後に遅れ出している佐々木と片桐のヨットを確認していた。
「また、優勝できそうですね」
「ああ」
佐々木、片桐のヨットとは、かなり距離を広げられていたので、余裕を持って笑顔になっていた。
「このまま、先生たちの乗っているボートの左端からゴールラインを越えるぞ」
「はい」
あともう少しでゴールという時、2人のゴールしようとしていた右端のゴールラインとは別の左端の側からゴールラインに入ってくるヨットに気づいた。
「右からゴールしてくるヨットがあります!」
健ちゃんは、洋ちゃんに伝えた。
「え、なんだよ。あのヨットは」
健ちゃんからの報告で、洋ちゃんもそのヨットの存在に気づいた。
「まずい、向こうの方が速い」
ポートタックでgールラインを目指す洋ちゃんたちのヨットよりも、スターボードタックでゴールラインに突っ込んでくる向こうのヨットの方が速かった。
「このままじゃ、向こうの方が先にゴールしちゃうぞ」
その洋ちゃんの言葉通りに、相手のヨットが先にゴールラインを抜けると、そのまま洋ちゃんたちのヨットのすぐ目の前を走り抜けていった。
「え、愛菜じゃん」
目の前を走り抜けていったヨットを操船していた女の姿を見て、洋ちゃんが言った。
さっき、艇庫からヨットを出すのを手伝ってあげようとして、余計なことをするなと怒られた相手の愛菜だった。
「マジかよ、愛菜に負けてしまった」
洋ちゃんは呟いていた。
ヨットレースのライバルとして、佐々木や片桐の乗っているヨットはマークしていたが、まさか愛菜のヨットがライバルになるとは思っていず、全くのノーマークだった。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など
横浜のマリーナ クルージングヨット教室生徒募集中!