ジュニアヨット教室物語31
Photo by vlog tottiy on Unsplash
「洋ちゃんー!」
日曜日の朝、健ちゃんが、洋ちゃんの家のベランダから洋ちゃんのことを呼びにきた。
「おはよう」
洋ちゃんは、バッグを持って出て来ると、健ちゃんに挨拶した。
先週のヨット教室初日の朝と同じで、健ちゃんが迎えに来て、2人は一緒に出掛けることになった。
「お母さん、行って来まーす!」
洋ちゃんは、家の中にいるお母さんに大声で伝えると、横浜駅に向かって歩き出した。
「ね、洋ちゃん。今日も、僕と一緒の船に乗ってもらえませんか」
健ちゃんは、駅に向かって歩きながら、洋ちゃんに話しかけた。
「別に良いけど・・」
「良かった。なんか、まだよく知らない子と乗るより、昔から知ってる洋ちゃんと一緒に乗れた方が乗りやすいなと思っていたんで」
「そうなんだ」
洋ちゃんは、健ちゃんに返事した。
一瞬、毎週同じで乗るよりも、新しい子と乗る方がいろいろ刺激あって良いかもよと答えようと思っていたのだったが、健ちゃんのホッとしたような表情をみると、そう答えなくて良かったと思った。
この間、お母さんに、健ちゃんのお母さんがいつも勉強しかしない子で、少しは外で運動とかスポーツした方が良いと心配していた話を聞いていたので、健ちゃんのことを否定しないで済んだのであった。
「お母さん、ありがとう」
洋ちゃんは、心の中で母に呟いていた。
「あれさ、俺って、なんか先生たちがスタート前の旗を上げている感覚がよく掴めなかったからさ、また健ちゃんがカウントダウンしてくれると助かるよ」
洋ちゃんは、健ちゃんに話した。
「ああ、カウントダウンぐらいだったら、いくらでも出来るからやりますよ」
健ちゃんは、嬉しそうに洋ちゃんに答えた。
「おっ、頼むよ。また、俺たちでレースを優勝しちゃおうぜ!」
洋ちゃんも、笑顔で答えた。
「あれ、あそこにいるのって武井じゃない?」
「ああ、そうかもしれないですね」
根岸駅に向かう電車の中で、先頭車両に同じヨット教室の生徒がいることに気づいた。
「おはよう!」
洋ちゃんは、健ちゃんを背後に従えて、武井の側に近づくと声をかけた。
「あ、おはよう!」
初日の先週だったら気づけなかったかもしれないが、先週に1回、ヨット教室で一緒だったので今週は、同じ電車で通っていたことに気づけたようちゃんだった。
「いつも、この時間の電車だったんだ」
「まあ、今日はたまたまですけどね」
先週会ったばかりの子だったが、洋ちゃんは、普通に武井と会話していた。
洋ちゃんが、自然に武井と会話し始めたのをみて、健ちゃんは、友達とはこんな風に話しかけていけば、その後も自然な感じで会話を続けていけるのだということを知って感動していた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など
横浜のマリーナ クルージングヨット教室生徒募集中!