ジュニアヨット教室物語29
Photo by Chloé Lefleur on Unsplash
「夕食よ!」
学校から戻ってきて、お母さんに言われて、自分の部屋で勉強をしていた洋ちゃんが部屋から出てきた。
「夕食できたの?」
「できているわよ」
お母さんは、洋ちゃんに返事した。
「で、勉強はできたの?やる気は出たの?」
「まあね」
洋ちゃんは、お母さんに曖昧な感じで返事した。
この子は、結局やる気になんかなっていなかったみたいねと、お母さんは、自分の息子の態度を見抜いていた。
「早く食べちゃいなさい」
お母さんは、洋ちゃんの茶碗にご飯を装いながら言った。
「いただきます!」
洋ちゃんは、夕食を食べ始めた。
「で、さっきの話、健ちゃんがどうしたの?」
お母さんは、自分の息子が夕食を食べているところを眺めながら質問した。お母さんは、後でお父さんが会社から帰ってきてから一緒に食べるので、今は食事していなかった。
「そうそう、健ちゃんなんだけどさ」
「ええ」
ようやく、お母さんが勉強の話を忘れてくれて、俺の話を聞いてもらえると思って、洋ちゃんは安心して話を再開した。
「彼なんだけどさ、ヨットに本当は乗りたくないんじゃないかな」
「ええ」
「彼、めちゃすごくてさ、昨日の帰りに有隣堂で・・」
健ちゃんのことを話すつもりで、帰りの有隣堂での話を続けようと思って、また有隣堂から自分の勉強の話に戻ってしまったらまずいと思ったので、急いで話を中断した。
「有隣堂でも難しい本とか得意だし、なんかヨット乗りたくないって感じに見えた」
「そうね」
「一緒にヨットに乗っていても、乗っているのが楽しくなさそうで、海で乗っているときよりも、早く陸に戻りたいって思っているような・・」
「そうかもね」
「無理して、ヨット教室に通わなくても良いんじゃないかなと思った」
「そういうこと言わないの」
お母さんは、洋ちゃんに言った。
「だって、外で遊んだりするよりも、家の中とかで過ごす方が好きなじゃないかな」
「そうよ。だから、健ちゃんのお母さんは、健ちゃんの身体のことを心配して、少し外で運動させたいって、ヨット教室に通わせることにしたんじゃないの」
「そうなんだ」
洋ちゃんは、お母さんから話を聞いて、頷いた。
「でも、毎日学校から帰ってくると、塾に行っていると言っていたよ」
「そうよ」
「だったら、別にヨット教室に行かなくても、塾に行くのに毎日歩いているし、運動はしているじゃん」
「塾までの道を歩くぐらいじゃ運動とは言わないでしょうが」
お母さんは、洋ちゃんに言った。
「いつも、インドアであまり運動とかする子でなくて、塾で勉強している子たちとばかり、一緒にいるから少し活発に遊び回っているような子とも仲良くなって、新しいことも始めてほしいと思って、お母さんは、健ちゃんにヨットへ通わせたんじゃないの」
お母さんは、洋ちゃんに説明した。
「そうなんだ」
「だから、あなたも小さい頃から仲良く遊んでいた健ちゃんが、ヨット教室に行くの嫌にならないように協力してあげなさいよ」
「わかった」
洋ちゃんは、お母さんに頷いた。
「お母さんと健ちゃんのお母さんでは、心配する部分が全く逆ね」
「どういうこと?」
洋ちゃんは、お母さんに聞き返した。
「あなたは、いつも外で遊んでばかりで、勉強のことが心配だけど。健ちゃんは、お家で勉強ばかりしていて、もっと遊ぶときは皆と遊んで欲しいって心配で・・」
「はいはい」
洋ちゃんは、またそろそろ自分の部屋へ退散した方が良さそうかと考えていた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など
横浜のマリーナ クルージングヨット教室生徒募集中!