ジュニアヨット教室物語20
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「ヨットでは、ヨットの左側のことをポートといいます」
片桐一郎は、生徒たちの前での講義が始まった。
「では、右側のことを何ていうかわかりますか?」
生徒たちは、片桐一郎からの問題を考えていた。
「ヨットの左側はポートですよ。では、右側です」
「左がポートなのだから、右はボートとか・・」
「違うよ。ライトとか」
生徒たちが口々に予想していた。
「ヨットの右側のことをスターボードといいます」
片桐一郎は、正解が出そうもないので、自分の口から答えてしまった。
「風がこちらから吹いていて、ヨットはこちら側にセイルを出して走っています」
片桐一郎は、クラブハウスの端に置いてあるホワイトボードを、子供たちの前に移動すると、ボードにヨットの絵を描いて、風の吹いてくる矢印を書いた。
「ヨットの左側はポートですよ。つまり、セイルは右側に出ていて、左から風を受けています」
あまり絵が上手でない片桐一郎は、ヨットの絵の上に「ヨット」という注釈を付けながら、生徒たちに説明するのを続けていた。
「このヨットのことをポート艇といいます」
片桐一郎は述べた。
「では、今度は逆からヨットがやってきました。こっちのヨットとは反対を向いていますから、右から風を受けているヨットです。つまり、このヨットはスターボード艇になります」
と、片桐一郎は説明した。
「ヨットのルールでは、ポート艇は、スターボード艇を避けなければなりません」
「どうしてですか?」
「そういう風にルールが決まっているのです。それに、このまま、どっちのヨットも真っ直ぐに進んでしまったら、両方のヨットはぶつかって衝突してしまいますよね」
片桐一郎は、ホワイトボード上のヨットを、それぞれ矢印で前方に進めてみせて、お互いに衝突させた。
「だから、ポート艇はスターボード艇を避けるってルールにしたのです。その方が、風向き的にも避けやすく、衝突事故を起こさなくて済むからです」
「そうなんだ」
「だから、ヨットレース中でも、スターボード艇は、前からやって来たポート艇に対して、大きな声でスターボード!と声をかけてあげると、ポート艇は、スターボード艇に気づいて避けて挙げられます」
片桐一郎が説明すると、子供たちは、子供たち同士でスターボード、スターボードと声を掛け合って遊び始めていた。
「はいはい、ここは陸上ですからね。スターボードは海に出てからにしましょう」
片桐一郎は、笑顔で子供たちに注意した。
「あと、水をくれって掛けることもあります」
片桐一郎は、ヨットレースのルール説明を続けた。
「スタートラインでは、どのヨットもスタートラインの一番良いところからスタートしたいです。だから、スタートラインの一番優位に走れる場所は、レースの参加艇で溢れます。そうすると、前も横も相手のヨットだらけで走れなくなってしまいます。そんな時に、水くれと主張するのです」
片桐一郎が説明すると、今度は子供たちは、水くれ水くれとお互いにぶつかり合って、遊び出した。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など
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