ジュニアヨット教室物語16
Photo by Buddy Photo on Unsplash
「もう少し、セイルを引くように!」
「それじゃ、風に立ってしまっているから、少し方向を変えないと・・」
少年少女たちは、先生が沖合いに打ってくれた2つのブイの間をグルグル回っていた。
子供たちがヨットで回っている周りを、先生たちは小型のボートに乗って、走り回っては、セイルを引けとか、もっと出せとかって乗り方を指導してまわっていた。
「もっと、セイルを引くんだってさ」
洋ちゃんは、同じヨットの前の方でメインシートを握っていた健ちゃんに行った。
「このぐらいですかね」
健ちゃんは、メインシートを引きながら、洋ちゃんに質問していた。
「たぶん、そのぐらいじゃないかな」
今日初めてヨットに乗った洋ちゃんも、どのぐらい引いたら良いのかよくわからないままに答えていた。
「ね、そろそろ代わらないか」
洋ちゃんは、健ちゃんに聞いた。
「代わるって?」
「だって、ヨットで出航してから、ずっと俺がラダーを持っているじゃん」
「そうですね」
「今度は、俺が船の前で、そのシートを握っているから、健ちゃんが、こっちに来て、このラダーを操船したら良いんじゃないの」
洋ちゃんは、健ちゃんに勧めた。
「いや、洋ちゃんが操船はしていてくださいよ」
「そう?」
洋ちゃんは、健ちゃんに聞いた。
「ええ、僕は、ヨットのそれって持ったことありませんし」
「俺だって、今日初めて持ったんだけど・・」
洋ちゃんは、答えた。
「でも、操船は、洋ちゃんがやってくださいよ」
「まあ、良いけど」
洋ちゃんは、それ以上は健ちゃんに操船を勧めなかった。
元来、インドア派の健ちゃんは、船の前方でメインシートを持っているだけで、もういっぱいいっぱいになっていた。
「お昼休みも、まだですものね」
健ちゃんは、洋ちゃんに確認していた。
まだ、ヨットに乗り始めて、午前中もすぎていなかった。
「もう少し、メインシートを引いてくれる」
「わかりました」
健ちゃんは、洋ちゃんの指示でメインシートを少し引いた。
お母さんには、1年間ヨット教室に頑張って通ったら、来年から医大受験用の予備校に通わせてくれると約束してもらえたのに。まだ半日だというのに、健ちゃんはもうヨットに乗るのが飽きてきていた。
ピピピピー
先生の乗っているボートから笛の音が響いて、そろそろお昼の時間だから1回陸に戻って、お昼ごはんにしましょうと先生から指示があった。
「お昼だってさ」
「陸地に戻るんですよね」
「戻りましょう」
洋ちゃんは、よほど健ちゃんがお腹を空かせてきていて、早く陸に戻りたがっているのだと思っていた。
「Uターンしますか」
洋ちゃんは、健ちゃんに言われて、ヨットを方向転換して、マリーナに向かって走っていた。
健ちゃんは、ヨットに乗っているのが嫌で、とりあえず早く陸地に帰りたかった。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など
横浜のマリーナ クルージングヨット教室生徒募集中!